こういう人々だけを集めて国を作ったら、面白いよー。
何しろ、方向音痴だらけだから、会社や学校にたどり着くのが一苦労だ。業務や授業が始まるのはだいたい、定時の3、4時間後。
しかも、夕方にようやくやってくる社員がいたり、先生が学校にたどり着けなかったりする。
ひどい迷子になった者は、警察に保護されるのだが、警察官も警察に戻ることができない。
無線で連絡をとっても、何しろ、自分達がどこにいるのかわからないのだから、役に立たない。
ようよう、どこかの交番にたどり着いて、帰り道を調べようとするのだが、だーれも地図の見方がわからない。
途方に暮れて、日も暮れるのだ。
夜になると、帰り道をわからなくなった人々が、そこらじゅうで野宿をしている。
インフラの整備も大変だ。
何しろ、道路工事を始めれば、全員で勝手な方向へどんどん道を作っていってしまう。国中、ぐねぐねの道だらけだ。
水道も、電線も、ガス管も、勝手な方向にどんどん伸びていく。たまたまどこかの家に行き当たったら、「ま、ここにしとけや」とつないでしまう。抽選で当たるようなものだ。
バスに乗ると、運転手がわけのわからない方向へと勝手に走り出す。毎日がマジカル・ミステリー・ツアー。
タクシーは「目的地へ行くためのもの」ではなく、「クルマに乗るという体験をするためのもの」に過ぎない。
飛行機は他国の領空侵犯を繰り返し、スクランブル発進した戦闘機によってバンバン撃墜される。
この国の政界は、もちろん、いつも「迷走」している。
あるいは、人見知りの人々によって建国された国、というのはどうだろう。
会えば、全員、顔をぽっと赤らめ、黙ってしまうのだ。
テレビでは、ニュース番組でアナウンサーがただ黙ってモジモジしている。
コンサートでは、歌手も、観客も、シーンとして終演時間をひたすら待っている。
映画はもちろんサイレント映画だ。しかも、出演者全員、ただただ恥ずかしがっているのである。
国会では、そもそも発言というものがないから、何ひとつ決まることがない。
外交交渉ということができないため(外交官がシャイで無言なのだ)、どんどん周囲の国々に領土を奪われてしまう。
そうして――方向音痴の道がぐねぐね伸びてきて、なぜか水道や電線やガス管も彼らが勝手に整備してくれるのである。
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「今日の嘘八百」
嘘七十六 人類みな兄弟。近親相姦だらけだ。