疑問

 以下は「宇宙戦争」のネタバレを含むのだが、ネタがバレたからといってつまらなくなる小説ではない。


 しかし、結末を知るのが嫌な人は、勝手にしてくれ。まあ、他の人にも勝手にしてもらいたいのだけれども。
 つまりは、全員勝手にしていただきたいのだが、言われなくても、勝手にするだろう。だから、こちらも勝手にやる。まったく、勝手なもんだ。


宇宙戦争」では火星人が地球の細菌類に感染して、「あれ、ま」といううちに全滅してしまう。
 科学が発達している割には、間抜けというか、無頓着というか、「火星は住みにくくなってので、んじゃ、ま、地球にでも」と、疫学方面のことはまったく考慮せずにやって来る。割合にのんきで安易なやつらだ。


 ゴジラ現象というか、ウルトラマン現象というか、小説では、火星人が攻めてくるのはイギリスだけである。
 騒ぎが終わった後でヨーロッパから援助物資が送られてくる描写があるから、火星人は他の地域には降り立たなかったらしい。そうして、勝手に病気で死んでしまう。


 では、火星人の集団が、シベリアサハラ砂漠のど真ん中に着陸していたらどうなったのだろうか。


 巨大戦闘マシーンが高熱ビームを発射し、毒ガスをまき散らしても、まわりは深い針葉樹林か、砂漠。
 せいぜい、シベリアデルス・ウザーラが毒ガスにやられるくらいで、2週間くらいのうちに、火星人は全滅してしまう。


 そうして、世に知られぬままに、火星人の侵略は勝手に終わってしまうのだ。


 ここまで書いて気づいた。
 そうか、デルス・ウザーラの家族は、火星人の毒ガスで死んでしまったのか。


 何のことやら、わからない人も多いだろう。黒澤 明の「デルス・ウザーラ」を見てください。美しく、悲しい人だ。


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