人生と重力

 友達と話していて、体型の話になった。


 その友達は、最近、体型がだんだんキューピー化してきているという。
 キューピーといっても、頭の先がとんがった赤ちゃんのほうではなくて、マヨネーズのほうだそうだ。
 つまり、下のほうがムニュウとしてきた、というわけで、これは友達に限らず、年をとれば、かなり多くの人が経験することではないか。


 その、ムニュウの部分を押すと、頭のてっぺんから何がムニュウと出てくるのかはわからない。脳漿かな? 脂肪かな?


 わたしは、人から痩せているように見られるけれども、そうでもない。最近は体重を計っていないが、身長167cmで体重は55kg〜60kgくらいだと思う。
 まあ、わたしの年齢からいえば、中肉中背といったところではないか。


 では、それなりに機能的な体つきをしているかというと、これがまったくそんなことはない。
 何でできているのかは知らないが(やさしさ、かもしれない)、筋肉中心でないことは確かだ。何しろ、最近は自分が歩いている、物を持てるというだけで、「おれもなかなかやるではないか」と感心してしまうくらいである。


 一般に、人間は、年をとるにつれ、重力と妥協していくようだ。


 よほどトレーニングをしている人は別として、30代も半ばを過ぎると、逆三角形の体型を維持している人は少ない。
 キューピー氏のように下側がムニュウとしてきたり、軽く前屈みになってきたり、プチ・ジャバザハット化してきたりするのだ。


 考えてみれば、人間は重力に打ちのめされた状態で生まれてきて、悔しさに泣きわめく。
 しかし、ハイハイという形で徐々に抵抗を始め、立ち上がることで引き分けに持ち込む。


「クソガキ」と呼ばれる年になると、なぜにあれほどエネルギッシュなのかわからぬが、走るわ、飛ぶわ、木には登るわ、と、重力に対してガンガン挑戦的になっていく。


 そこらへんからだんだん分かれていって、飛んだり跳ねたりして重力と戦う――というより、重力と遊ぶ、かな――タイプか、重力のことはとりあえず棚上げして、みうらじゅんを先達とあおぐタイプになっていく。


 で、まあ、30代も半ばくらいから、重力との妥協が始まって(一部の人は抗するが、たいてい負け戦である)、だんだん地面に近づいていく。


 たらたらと生き延びれば、やがて、長時間、蒲団の中で全身を地面に接するようになる。


 結論を急いで、高いところから重力に激しい愛を打ち明ける人もいる。“I can...not fly!”と、ニュートンの学説に対する支持を、全身で表明するのだ。
 重力のほうでも、激しくそれに応えてくれるのであるが、微に入り、細に入り描写するのはグロテスクなので、やめておく。
 似たようなものは、運転免許の教習所に通うと、そのうち、ビデオで見せてくれます。


 そんなわけで、特に結論もないのだが、重力、サイコー! 今後とも、よろしく!! 力いっぱい、妥協しまっせ。


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