スキップ

 相変わらず面妖な働きをする脳髄で、朝、起き抜けに、スキップはなぜ楽しいか?、ということを考え始めた。


 スキップしているのを見ると、人はたいがい、「ああ、楽しいのだなあ」と思うものだ。
「ドラゴン怒りのスキップ」とか、「われ泣きぬれて蟹とスキップ」なんていうフレーズは、どうもピンと来ない。


 今はモラルが変わって、何でもアリの世の中に思えるけれども、やはり、タブーというのは根強く残っている。
 例えば、上司が急死したとき、葬式や通夜にスキップで来る、というのはやはりマズいだろう。たとえ、内心、どんなにウレしくても、だ。


 スキップは、見たときも「楽しいのだろうな」と自動的に判断してしまうけれども、自分でやったときも自動的に楽しくなってしまう。これも不思議だ。


 タカタカタカタカ、という8分音符ではなく、タッカタッカタッカタッカ、というシャッフルのリズムだからだろうか。


 シャッフルというのは、いわゆる“ハネる”リズムだ。阿波踊り東京音頭のリズムを思い出してもらえばよい。


 試しに、部屋でタッカタッカというハネるスキップと、タカタカというハネないスキップを比べてみた。


 ハネないほうは、左足、左足、右足、右足、と均等に床を踏むことになる。タカタカというより、実際はタッタッタッタッという感じである。
 やってみるとわかるが、全然楽しくない。スタート地点で体をほぐしている陸上選手か、麦踏みをする農家の人みたいな気分になる。


 それをタッカタッカに切り替えると、お。だんだんウキウキしてきたぞ。


 音楽からの影響かとも考えたが、しかしリズムのハネる曲が、必ず楽しい曲、陽気な曲とは限らない。


 スキップしながら、即興でブルースを歌ってみた。


「♪(ダッカダッカダッカダッカ)ん〜、女が出てったぜ、ベイベ〜」


 腰から下が楽しく、腰から上がやるせない、不思議な気分になった。


「♪あなた知〜ぃってる〜、港、ヨコ〜ハマ〜」


 しかし、青江三奈の「伊勢佐木町ブルース」でスキップすると、不思議にハマった。体が丸ごと、歌に溶け込んでいくような感覚がする。これは発見である。


 それとも、スキップし続けて、頭がだんだんパーになってきたのだろうか。


 とても変な感じだ。皆さんも、一度、やってみていただきたい。


 ただし、いろいろな意味で、会社ではやらないほうがいいと思う。
 また、部屋でやる場合も、「オレ、ひとりで何やってんだろ」という急な虚無感に襲われることがあるので、注意が必要だ。


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嘘二百二十一 白雪姫が仮死状態になったのは、リンゴに毒が入っていたからではなく、リンゴを一個丸ごと飲み込んだからである。