嘘つき村

 嘘、という話でよくわからないのは、クイズによく出てくる「嘘つき人」である。
 嘘つき人は嘘つき村の住人で必ず嘘を言う、なんていう、あれ。


 嘘つき村の学校では、どういうふうに教育するのだろうか。
 たとえば、歴史の時間に「アメリカ合衆国の初代大統領は石川五右衛門です」などと、堂々と嘘を教えるのか。
 学校の先生も嘘つき人だから、本当のことを教えてはいけない。しかし、これでは、学校、というものの存在意義自体がなくなってしまうのではないか。


 さらにわからないのはテストである。
「1+1=□」と問題が出ていたとして、当然、生徒としては2と書いてはいけない。
 逆に言うと、2以外の数字を書けば、正解になるのだ。なぜなら、たとえば、「1+1=3」と生徒が書いた場合、普通人の学校ならペケをつけるところだが、嘘つき人の先生は丸をつけなければならないからだ。嘘として。


 しかも、生徒は当然、テスト用紙の名前の欄に、他の生徒の名前を書く。全員、名前が他人のうえ、解答も間違いで(たまに間違ったつもりで偶然、正解を書いてしまう場合もあるだろうが、これは不正解ということになるのだろう、嘘つき人的には)、先生の採点も全部、嘘。
 そうして、先生は採点した答案を、(書いてある名前とは)別の人間に返すのだ。


 嘘つき村の大学入試なんて、凄いよ。
 私は、ぜひ彼らの小論文を読んでみたい。書いてあることはデタラメなうえ、名前と受験番号も嘘。
 合格発表も嘘だから、受験勉強なんかしなくても、たまたま嘘として発表された運のいいやつが合格するのだ。


 今年から新受験生になる諸君よ。しかし、嘘つき村を羨むことはない。
 なぜなら、嘘つき村の大学に入った学生は、教授から嘘しか教えてもらえないのだから。


 では、今日はこんなところで。あ、そうそう。私、本当のこというと、女ですから。


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