昨日、「今週、妻が浮気します」という書名をもじって、「今週、妻が撤収します」とやった。
ふと思ったのだが、「今週、妻が○○します」の○○の部分にテキトーに言葉を入れると、どうなるだろうか。
「今週、妻が浮気します」という本自体は読んでいない。
風の噂では、インターネットの掲示板で悩みを相談した夫に、ページを閲覧した人々がいろんなアドバイスをする。そうして、事態が進んでいった、と、そんな内容らしい。
では、さっそくやってみる。
「今週、妻が爆発します」
うーん、いきなりそんな相談を持ちかけられても。
この「爆発」は、常識的には、激怒する、ヒステリーを起こす、という意味だろう。しかし、文字通りの爆発=explosionだと、何ともアドバイスしにくい。「実は私も、以前に妻が爆発した経験のある者ですが〜」なんて人は少ないだろうし……。「警察に相談したら?」くらいしか言えなさそうだ。
「今週、妻が料理します」
一見、何事もないようだけれども、さにあらず。夫がわざわざネットで相談する、ということは、きっと、その妻の手料理というのはよっぽど不味いのだ。
夫はこれまでにも何度か被害にあっており、「金曜日の晩、早く帰れそうだから、ひさしぶりに料理するわね」という妻の高らかな宣言に、戦々恐々としている。かといって、妻のやる気を削ぐのも何だし、あまりロコツに言っては可哀想だし――と、くよくよする、いじらしくも優柔不断な夫と、同じ悩みを抱える全国妻の不味い手料理被害者の会の人々の、愛と葛藤の物語。
もしかしたら、面白いかも、と思えてきた。全然、ドラマチックではないけれども。
「今週、妻が入浴します」
よほど珍しいことなのだろうか。何だか、バッチいなあ。
「今週、妻が泥棒します」
今どき、「泥棒」という言い方自体、あまりしないけれども。
私は「泥棒」というと、頬かむりして、出刃包丁持って、深緑色に渦巻き模様の風呂敷を背負っている姿を想像してしまう(もう二十年近く見ていないが、「サザエさん」には今でもああいう泥棒が出てくるのだろうか)。顔には、故・三波伸介がよくやっていたような、口のまわりを黒々と楕円形に塗るヒゲが。
そんな妻がいたら、確かに、匿名で誰かに相談したくなるだろう。
「今週、妻が脱獄します」
これはいい。きっと売れます。
牢の形状から日課、刑務所内の建物の配置、刑務官の交代時間、手に入る道具まで、閲覧者に克明に知らされる。そうして、さまざまな脱獄のテクニックやプランを、そんじょそこらの人々が提案するのだ。リアルタイムで流れを体験すると、相当、スリリングだろう。
ただし、官憲にページの存在がバレたら、一巻の終わりだ。
いや、それもあらかじめ計算に入れて、適当にガセネタを織り込んでいけば、逆にスリルが増すか。
最後に、思わぬどんでん返しがありそうだ。うー、読んでみたい。
「今週、妻がキセルします」
あんまりスケールの小さい相談も、考え物である。
「今週、妻がヘソクリします」
だからね、あんまりスケールの小さい相談は困るわけですよ。まわりからすると。
かといって、スケールが大きければいい、というものでもない。
「今週、妻がオゾン層を破壊します」
凄い妻である。環境破壊妻。マイ・ワイフ・イズ・ア・デストロイヤー・オブ・ジ・エンバイロメント。私の愛する妻が、今週、大規模気候変動を引き起こす!
しかし、実際にやることといえば、フロンガスの入った古いスプレーを、空に向けて、ぷしゅーっ、と発射するだけ。
まあ、そうした謎の行動に走る妻の、得体の知れない心の闇が、恐ろしいといえば恐ろしいが。
「今週、妻が空爆します」
たぶん、妻が空軍のパイロットか何かで、どこかに爆弾を落っことすのだろう。
反戦派の夫としては、何とかしたい。しかし、軍隊の命令系統に介入することはもちろんできないし、妻が命令拒否して軍法会議にかけられるのも、また困る。
この相談にきちんと答えるのは、相当、難しいですよ。
「今週、妻が上陸します」
とうとう、妻はゴジラと化してしまった。ここまで来たら、相談というよりも、警報と言ったほうがいいかもしれない。相変わらず、自衛隊の各種部隊が出動しては、踏みつぶされるのだろう。
「今週、妻が飛来します」
妻、UFOバージョン。電波系の相談。オマケです。