むしる喜び

 これを読んでくれる人にとってかなりどうでもいい話だろうが、おれは体から何かをむしるのが好きだ。

 たとえば、乾いたカサブタ。もうイケるかな、まだ早いかな、というくらいのカサブタが最高だ。はじの方の少しめくれているところをつまんで、メリメリメリッとはがすときがたまらない。下がおおよそかたまっていて肉がうっすらとしたピンク色になっていたり、少し早くて血がにじんだりする。

 あるいは、弱い毛。おれは、耳の付け根の顔側でちょっとふくらんだところ(今調べたら耳珠というんだそうだ)に時々短い毛が生える。そいつの生え出した頃に先端を中指と親指の爪でつまんで抜く。ヌュイ、となんとも言えない感触で抜ける。この感触がたまらずいいのだ。

 きちゃない話になるのだが、耳垢やフケを剥がすのもいい。おれは耳かきを何種類も持っていて、特にいいのはステンレス製の螺旋状になったやつ。こいつを耳につっこんでムリッと耳垢をとる。螺旋の溝にいっぱいに耳垢がはまっていたり、思わぬ大物がとれたりすると、「おお!」となぜか喜びを覚える。どういう脳神経方面の働きなんだろうか。耳垢がとれたのを見ると、何か脳内物質が分泌されるのだろうか。なんと無駄な脳の働き。フケがとれるときの喜びはカサブタのそれに似ている。

 とまあ、最初に断った通り、実にどうでもいい話であった。正直、すまんかった。