ラグビーの不思議

 ラグビー・ワールドカップを見ている。おれが選手なら、試合開始5秒で首の骨を折って死んでるな、と思いながら見ている。

 強豪国の争いはやはり見応えがあり、面白い。イングランド×フィジー戦で、一時14点差をつけられていたフィジーが一気に追いついたときには格別フィジー・ファンというわけでもないのだが、感動した。もしかすると、日本代表だけを応援して他を見ないという人もいるのかもしれないが、もしそうならもったいないことだと思う。

 しかしまあ、ラグビーを見ていて思うのは、よくこんな複雑なルールのスポーツができあがったものだということだ。ラグビーのルールの歴史については知らないが、どうやってこんなルールができあがったのかと不思議に思う。

 ラグビーの基本的なコンセプトのひとつはパスを前に投げてはいけない、ということだ。これによって列をなしながら走って敵を突破していくラグビーの形ができあがった。パスを前に投げてはいけないから、ボールを前に落とすノックオンや、ボールを前に投げてしまうスローフォワードのルールができたのはまあ、わかる。あるいは、ボールを持った状態でタックルされて倒れ込んだとき、ボールを抱え込んだままでは先に進まないから、ノットリリースザボールができたのもわかる。タックルした相手のボールに覆いかぶさったままだとやはり先に進まないからノットロールアウェイができたのも、まあ、わかる。

 しかし、スクラムを組む、なんていうルールはどういう経緯でできたのだろうか。あるいは、ボールがサイドラインから出たときに大勢が列に並んでラインアウトでボールを取り合う、なんていうのもフットボール(サッカー)の発展形としてはちょっと思いつかないルールのように思う。

 伝説ではラグビーは、イングランドラグビー校でフットボールの試合をしていたとき、ウィリアム・ウェッブ・エリスという少年がボールを腕で持って走り出したことに始まるという。「おいおい」「何やっとんねん」「反則やんけ」とまあ、関西弁でツッコむこともないが、そこで単なるファウルにならずに、新しいスポーツが発展し始めたというのがそもそも不思議である(もっとも、エリス少年の逸話は本当かどうか疑わしいらしいが)。

 ボールを持って走ってよい、というところから、スクラムラインアウトのようなルールというか、工夫が生まれるまでには相当な飛躍がある。イギリス系のスポーツはサッカーやテニスのように比較的単純なルールのものが多いけれども、ラグビーは随分と複雑で作為的(悪い意味ではない)で、デザインされたスポーツのように思う。