脳内物質、どぴゅっ

 おれは脳科学方面についてはまったく無知だが、何やら脳内物質が分泌されると我々の感覚や感情が変わったり、身体の動きが変わるらしい。

 ぱっと思いつく脳内物質(神経伝達物質)を挙げると、アドレナリン、エンドルフィン、ドーパミンセロトニンといったところだ。まだまだあるだろう。エンドルフィンは幸せ、満足感に関わるんだったかな。アドレナリンは格闘技方面でよく聞く。ドーパミンも幸せ方面だったような気がするが、間違っているかもしれない。

 どうやらわしらが行動したり、外界から刺激を受けたりすると、これらの汁(実際には分子なのだろうが、汁ということにしておく)が分泌されるらしい。

 たとえば、赤ん坊を抱き上げると脳内で汁がどぴゅっと出て、シヤワセな気分になる。犬に吠えかかられると汁がどぴゅっと出て、「てめぇ、この野郎!」と戦闘的になる。駅の階段を踏み外すと汁がどぴゅっと出て何やら情けない心持ちになる。飯を腹いっぱい食うと汁がどぴゅっと出て満足感に浸る。

 もしそんなふうだとすると、わしらは日常の中でやたらと脳内の汁がどぴゅっ、どぴゅっとなり、それにしたがって感情が動いているわけだ。

 人体というのは実によくできている。何億年前だか、何十億年前だか知らないが、化学物質の集まりが生命と呼べるものになり、放っておいたらどんどん進化して、酒を飲んだら脳内でどぴゅっ、猫の背中をなでたら脳内でどぴゅっ、などというふうになったというのは実に不思議なことに思える。