サラーとマネの礼拝

 サッカーのリヴァプールが好きで、よく試合を見る。リヴァプールイングランドプレミアリーグの強豪チームである。変幻自在でパワフルで、とにかく見ていて楽しいサッカーを見せてくれる。

 リヴァプールにはモハメド(モー)・サラーとサディオ・マネという強力な2人のアタッカーがいて、サラーはエジプト出身、マネはセネガル出身。2人ともイスラム教徒である。

 サラーもマネも、ゴールを決めると、まわりの選手の祝福を受けた後、ひざまずき、地面に額づいて、神に感謝を捧げる。その様はごく自然であり、観客も、多少囃し立てる声が聞こえることもあるが、普通に受け入れている。

 イスラムというと、一時のテロ騒ぎや戦争のせいで、偏見の目で見られることが多かった。今もそういう目で見る人は多いかもしれない。

 しかし、たいがいのイスラム教徒は日常生活を送る普通の人々であり、人を害さないことを当たり前としている人がほとんどであろうと思う。ところが、たまたま危険思想を持って危険行為におよぶごく少数のイスラム教徒がいると、それがイスラムの代表みたいに見えて、イスラムは危険、と誤解されてしまう。親切なアメリカ人のおばさんに出会うと「アメリカ人は親切である」と一般論にしてしまい、まくし立てるアメリカ人のおばさんに出会うと「アメリカ人は自己主張が強い」と考えてしまうようものである。

 サラーやマネがゴールを決めて額づき、それを観客が当たり前のこととして受け入れている様を見ると、イスラムにとってよいことだし、社会にとってもよいことだというふうに思う。