なで肩哀歌

 おれはなで肩で、引いて見ると、イカのような形をしている。

 ショルダーバッグを肩にかけるとズリズリずり落ちる。あれはなんとなく嫌なもので、おのれの無力感を思い知らされる。「ああ、おれはなんで生まれてきたんだろうか」とふと厭世的になってしまう。

 ハスにかければもちろん落ちないが、何かこう、「良い子」みたいな格好になって、なんとなく間抜けに見える。

 トートバッグの類も駄目で、ズリズリずり落ちのいかんともしがたい悲哀を味わう。おまけにトートバッグの持ち手の長さでははすにかけることもできず、「おれには一生無縁のものなのだろうなあ。お洒落はおれには縁がないのであるなあ」とまた遠征的になってしまう。

 なで肩にはほとんどメリットがない。いかり肩よりは空力特性がよさそうだが、それは前屈みになって、しかも人間離れしたスピードで走ったときに限るのであって、実用上の効果はまったくない。もし街で前屈みになって猛スピードで走る乙男を見たら、それはヤケを起こしたおれである。

 あとは、映画の「大脱走」とか、アクション映画でよくある体の幅ぎりぎりのパイプをくぐり抜けて潜入/脱出するときくらいか。おそらく、肩の張った人よりはパイプに入りやすいだろう。ただし、おれはお腹がぽっこりしているから、そこでひっかかるのは間違いない。敵に発見されたときは上半身を胸までパイプにめり込ませて、進むに進めず抜くに抜けず、ただ下半身をばたばたさせている間抜けな姿であることは間違いない。