悠子さん

 お読みの方に差し障りがあったらお詫び申し上げるし、土下座する覚悟もあるが、「悠子」という名前を見ると、おれはいつも軽く恐れをなすのだ。
 理由は簡単で、「悠」の字が「怒」の字に似ているからである。

悠子


怒子

 ガキの時分から親兄弟、先生、諸先輩方、男性の皆様方、女性の皆々様方に怒られ続けているおれとしては「悠子」という名前を見た途端に、「すわ、また怒られる」と条件反射的に身構えてしまうのである。そんなパブロフのおれ。
 そしてまた、「悠」の字は怨恨の「怨」の字にも似ている。これがさらに恐怖を誘う。

悠子


怨子

 同じ「うらみ」と読むとしても、「怨」という字には、「恨み」よりさらに深い、どこか因縁話めいた怖さがある。「リング」「らせん」の貞子を思い浮かべる。
「悠子」という名前をつけた親御さんは、きっと「悠々」とか「悠然」とか、ゆったりして落ち着いた広やかな心を持った子どもに育ってほしいという願いを込められたのだろう。
 それをどこぞの馬鹿(おれ)が勝手に空目してしまうというだけの話であり、いやはやご本人方にも親御さん方にも申し訳ない。
 でも・・・やっぱ、「怒子」「怨子」に見えませんか? おれだけッスかね?