初めて殻付き卵を産んだやつ

 生物の進化というのは、考え出すと実に不思議で、興味が尽きない。なんでこんなになっちゃんたんだろなー、とわたしはよく考えるのだが、例によって知識も思考力もついでに向学心もないので、なっちゃんたんだろなー、のまわりをぐるぐる回るだけである。

「最初に○○したヤツ」について考えるのが、わたしは好きだ。例えば、最初に消化管が口から尻まで貫通したヤツとか、最初に肺呼吸をしてみたヤツとか、最初にダッシュしてみたヤツとか、どんな具合だったのだろうか。

 進化論のほうでは「大進化」と呼ぶらしいが、生物がいきなり飛躍する場合がある。例えば、キリンの首が伸びる、なんていうのは、まあ、何世代もかけて少しずつ伸びたとも考えられる。しかし、魚類が両生類に変わるとか、幼虫から蛹、蛹から成虫に変態するとか、翼ができあがるなんていうのは、なかなか「少しずつ」だけでは考えにくい。例えば、大昔のトカゲみたいなやつが、毎日、飛ぼう、飛ぼうと前肢をバタバタさせてそこらへんを走り回っているうちに、鳥に進化なんぞするものだろうか? あるいは、先祖代々敵に襲われては木から飛び降りていた一族がいて、やたら飛び降りているうちに前肢がだんだん翼っぽく変化していったのだろうか? それとも、トカゲみたいな親から、ある日突然鳥みたいな子どもが生まれたのだろうか? 「どうも。私から後は鳥ですので、父上・母上とは一線を画させていただきます」というふうに。

 ――今朝、卵を食べながら、こんなことを考えた。ご案内の通り、カエルなどの両生類の卵は柔らかい物質(ゼリーや泡)に包まれている。一方、爬虫類や鳥類の卵は殻付きである。柔らかい物質と硬い殻の中間というのは考えにくい。ということは、親の世代まではやわらかい卵を産んでいて、自分は突然硬い卵を産んだやつが、どこかの時点で現れたのだろうか。硬いもんだからなかなか生みにくくて、「うー。お母様が生んでるのとは随分違う……」と難産して、ポン、とひり出してみたら硬い殻に覆われていた。そやつはさぞや驚いたろうなー、と思うのである。