東京の話し言葉

 今の東京近辺で話されている言葉というのは、何なんだろうなあ、と思う。


 東京弁と呼ぶと、古くからある(絶滅しかけている)東京言葉に悪いし、標準語と呼んでいいかというと、また違う。


 例えば、「〜じゃん」という言い方があるが、あれは確か、元々は横浜あたりの言葉だったはずだ。
「〜するやん」というような、おそらくは関西からの影響の言葉遣いもある。


 ここ十年ほどは、若者を中心に「〜じゃね?」、「〜するべ」というような方言っぽい言葉遣いも広まっている(あれ、元はどこの方言だろう)。まあ、若い衆というのはいろいろ言葉で遊ぶものだから、残るかどうかはわからないけれど。


 戦後の東京は、学生も含めて、全国各地からダバダバと人が集まり、古くから東京に住んでいた人達を吸収した(逆ではないと思う)都市だから、言葉方面の事情もややこしいのだろう。テレビの影響(関西芸人の東京進出とか)も結構あるかもしれない。


 じゃあ、ごった煮で何でもアリなのかというと、そうでもない。一定の地域にまとまって人が住んでいれば、やはり、規範はあるようだ。


 昔、やすしきよしの漫才で、よく横山やすしが東京の言葉を気取って、「ボク、〜しちゃったのさ」などと言っていたけれども、東京近辺ではああいう言葉遣いはしない。とても違和感がある(違和感があるから、東京の人間でも笑えたのだけれども)。


「〜のさ」という言い方を、東京近辺では日常会話でほとんど使わないだろう。
 東京近辺に住んでいる人は、仮に、「〜のさ」という言葉遣いで、話してみてもらいたい。なかなか自然に話せないと思う。


 あえて言うなら、「〜のさ」は気取った感じを出すための芝居・ドラマ用の言葉、あるいは話し言葉調の書き言葉だろう。
 もし日常会話で使うことがあったとしても、それは「気取った感じを出すための芝居・ドラマ用の言葉」の気取った感じを出したくて使ってみましたということであって(ややこしいな)、普通の話し言葉として使ってはいないと思う。


 あるいは、以前、ひさうちみちおが大阪の言葉を東京のそれに移し替えてみる、という漫画を描いていた。
 大阪の怖い人達の「お前ら、なんぼのもんじゃい!」は「キミ達、いくらのものなんだい?」だそうで、大笑いした覚えがある。


 が、しかし、この「〜だい?」も、実際には話し言葉では使わないだろう。あえて言うなら、「キミ達、いくらのものなの?」、か。


 今の東京近辺の話し言葉(そもそも何と呼べばいいのだ! 追記:首都圏方言と呼ぶらしい)の特徴をあえて挙げるなら、「〜してさ」、「〜してね」、「〜だね」、「〜だよ」、「〜だな」、さ、ね、よ、な、か。あと、疑問形では「〜すんの?」。「る」は「ん」になる。それに加えて、横浜発とおぼしき「〜じゃん」。


 とっちらかって、よくわからなくなってきた。頭の性能が悪いと難渋します。

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「今日の嘘八百」


嘘七百五十六 うちの町内の三丁目には、そこだけで使われるディープな方言がある。同じ町内でも、他の地区の人間には全然理解できない。