イソップ物語に「アリとキリギリス」という有名な話がある。
夏の間、キリギリスは歌を唄って遊んでいた。一方、アリはせっせと餌を巣に集めていた。
キリギリスはアリをからかうようなことを言ったらしい。いかにも遊び人らしくって、よい。
秋が過ぎ、冬となって、キリギリスは食い物がなくなった。
アリのところに餌を分けてください、とお願いにいくと、アリは「あんたらが夏に遊んでいる間、我々は冬に備えて、一生懸命働いていたのだ。何を今さら」とドアを閉めてしまった。
キリギリスは死んでしまった。
――とまあ、そんな話だ。
Wikipediaにこんな挿絵があった。
この話、アリの側につくか、それともキリギリスに多少なりとも同情するかで、その人の考え方や人となりが、結構、わかると思う。
結婚していらっしゃる方は、今夜あたり、夫婦でとっくりと話し合ってみてはいかがか。明日には離婚届に判を押しているかもしれない。
ガッコーキョーイク的にはアリの言っていることに分があるんだろうが、わたしはキリギリスのいかんともしがたいところが好きだ。
歌わずには、遊ばずにはいられなかったのだろう。遊びをせんとや生れけむ、といったところだろうか。
調子に乗って、アリをからかったのがしくじりの元だったのかもしれない。
気になるのは、死んだ後のキリギリスのことだ。
アリは雑食性で、肉を食う。あるいは動物の体液を吸ったりもする。しかも、勤勉ときている。
恐ろしいことだ。
餌を分けるのを断った後、ドアの後ろでキリギリスがくたばるのをじっと待っていたりして。
あるいは、夏の間、キリギリスの歌を聴きながら、「冬になったらあいつを、ね」、「そうだな。楽しみだな」なんてひそひそ相談していたりして。
えらい話になってきた。
悪とは何か? と思うのである。
アリでもない、キリギリスでもない。もしかしたら、こんなことを書くやつの性根のことかもしれない。
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「今日の嘘八百」
嘘四百九 実はこれは職業蔑視の物語である。