日曜の夜にテレビをつけたら、東アジア系の若いピアニストが、オーケストラをバックに演奏していた。
ピアノを弾きながら体を大きく動かし、表情が百面相的に変わる。
何だ何だ、と思わず見入ってしまった。
突然目を剥いたり、眉根を寄せたり、鍵盤にへばりついたかと思うとのけぞったり、天国的な恍惚の表情からいきなり苦悶の表情に陥ったりと、まあ、尋常ではない。
顔が香港映画に出てくる肉まん屋の息子風であることとも相まって、げらげら笑ってしまった。
番組はNHK教育のN響アワー。ピアニストは中国出身のラン・ランという人。後で調べると、若手ではかなり有名な人らしい。
YouTubeでその演奏を見ることができる。
・YouTube - Rachmaninov piano concerto No.3 (2/4)
こんなのもある。
・YouTube - Chopin Nocturne Op. 27 No. 2
衣装からすると、同じコンサートだろうか。音も猛スピードで迫力ある。
・YouTube - Lang Lang plays Don Juan Paraphrase; Part 2
いろいろな意味で、ただ者ではない。
表情の変化は、今、自分の指先から生まれた音に敏感に反応しているということでもあろうし、あるいは次の瞬間に自分の指先が生み出す音に集中しているということでもあろうし、その瞬間に現出した音の世界にのめりこんでいるということでもあろう。あるいは、多少の芝居っけもあるのか(別に悪いことではない)。
しかし、やはり顔は肉まん屋の息子なのであった。
オーケストラの人が演奏中にちらっと見たら、思わず噴き出してしまうんじゃなかろうか。特に管楽器の人が吹きながら噴き出したら、演奏は台無しになってしまうだろう。
――そう心配して見てみると、さすがに彼らもプロ。全員、目を伏せていた。嘘である。
客席から表情はそんなに大きく見えないだろう。もしかしたら、“ほどよい”のかもしれない。
しかし、テレビカメラはどアップで顔を捉える。画面いっぱいに映った、蝶ネクタイ姿の肉まん屋の息子がいきなり目を剥いたら、やっぱり、笑ってしまうのだ。
表情が間近でわかるのも善し悪しだと思う。
追記:こんなのもありました。快活にもほどがある。
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嘘二百八十四 速読術を身に着けたが、読み終わった後で何も覚えていない。