二枚目意識

 たいていの男は、心のどこかに二枚目意識を持っているのではないか、と思う。


 あ、おれだけですか。いやいや、そんなことはないでしょう。


 この二枚目意識というのは、説明がなかなか難しい。


 自分をヒーローと思うのとは違う。それはたいがい、ナルシストか、特殊な注射を打っているのである。
 自分はハンサムだ、という自惚れとも違う。容姿はあまり関係ないのだ。


 誇張して言うなら、ネスカフェゴールドブレンドの「♪ダバダ〜」をBGMにコーヒーを飲む感覚。
 あるいは、役所広司のように、少し内省的なふうに語る感覚。
 もしくは、中井貴一程度には真面目な役柄を演じて、誠実そうに振る舞う感覚。


 だから、容姿はあまり関係ないのだ。


 いつも二枚目意識でいるわけでもない。
 状況や気分次第で、二の線で行ったり、三の線に変わったり、両者が入り混じったりする。
 三の線になるときは、「本来は二枚目なんだけども、実は結構、三の線もできちゃったりして、オレ」と、イヤラしい自意識を持つこともある。


 二枚目意識というのは優れて主観的なものだから、実際にハタからどう見えるかはまた別の話なのである。