サイバー電脳仮想世界

 インターネット上の何かのことを、「サイバー〜」とか、「電脳〜」とか、「仮想世界」と呼ぶ人がいて、呼ぶのは勝手なのだが、違和感を覚える。


 たぶん、「サイバー〜」、「電脳〜」、「仮想世界」などという言葉にふさわしい大げさなものが、実際にはほとんどないからだと思う。「仮想」ったって、現にそこにあるわけだし。


 実際にインターネット上にあったり、そこで行われたりしていることといえば、商品のカタログ販売や、年金の相談や、区役所への行き方や、身辺雑記や、ちょっと書いてみた詩をうれしはずかしで人目にさらすことや、うまい飯屋の紹介や、本や映画の感想や、悩み相談や、エロ写真や、顔文字や、文字顔や(何だ、これ?)、馴れ合いや、けなし合いや、自分を相対的に高みへ持っていくための引きずり下ろしや、蹴落としや、意地になった反論や、尻馬や、野次馬や、捨てゼリフや、育児Q&Aなんかなのだ。


「サイバー育児Q&A」、「電脳育児Q&A」というのは、やっぱり大げさすぎる。
「Q. 赤ちゃんの脳内の神経細胞に電極をつなぐ場合、市役所に届け出は必要ですか?」なんて話をやっているのなら、まあ、そんなふうに名乗っていいかもしれないが。


「サイバー〜」とか、「電脳〜」とか、「仮想世界」という言葉を使いたがる心理というのは何だろう。SFチックな気分を味わいたいということか。


 おそらく、ウェブサイトに写真を一枚載せ、人に見せられるようにするだけでも、もの凄く複雑な、おそらく、ひとりの人間では理解しきれないくらいの技術が注ぎ込まれているだろう(電線をさかのぼれば、火力発電だか、原子力発電だか、水力発電だかの技術も関わっているわけだし)。


 しかし、そうしたややこしい技術を使って何が行われているかといえば、上に書いた通り。
 ウェブサイトに載っけた写真は、家族以外にとってはどうでもいいような、ガキの運動会でのお遊戯シーンだったりするのだ。あまりSF的な状況ではない。


 まあ、そこいらは、一般人には理解できない(する必要もない)技術を使って、テレビで花田家の遺産がどうなる?、なんてやっているのに似ている*1


 インターネットについて言えば、「仮想」よりも「仮装」のほうが語るに足る問題だと思う。


 駄洒落じゃないよ。本当にそう思っている。


▲一番上の日記へ

*1:別にどうなったっていいじゃないか、と思うのだけど。