寝起きに不機嫌な役者

 昨日に続いて、寝起きにまつわる話である。


 この日記では、時々、金魚の糞の如く話が細く長くつながることがある。理由は簡単で、特に書かねばならないことはないからだ。要するに、テーマなんて、何でもいいんですね。


 ふと思いついたのだが、寝起きにやたらと不機嫌な役者というのがいる。ハリウッドでは、この人がわかりやすい例だろう。


  ブルース・ウィリス


 この人の登場シーンは、かなりのパーセンテージで、目を覚ました途端、二日酔いの頭痛で頭を押さえ、顔をしかめて立ち上がる、というもののように思う(ちゃんと検証したわけではない。検証する気も特にない)。
「ハイ、私、自堕落で、ワイルドで、でもタフで本当はいいやつです」という表現なのだろう。


 まあ、ブルース・ウィリスの場合、演技の引き出しには、この寝起き不機嫌の他に、機関銃を持って走り回るか、顔をしかめてタバコを吸うかの二種類しかない気もするが。客はその三つで喜ぶのだから、それでいいのだろう。


 日本で言うと、この人が同じタイプだ。


  三船敏郎


「世界のミフネとブルース・ウィリスを一緒にするな!」というご意見もあろうが、私は別にここで役者としての上下を論じているわけではない。
 ふたりとも、「二日酔いタフ・タイプ」である。


 同じ二日酔いによる不機嫌な寝起きでも、内向して、それが暴発の危険を感じさせるタイプもいる。


  マイケル・ダグラス


 が、その一例だ。「二日酔いタフ・タイプ」が不機嫌であってもやつあたりしないのに対し、彼の場合はそこらへんにあるものを突然、ぶち壊しそうだ。
 いや、実際にぶち壊すかどうかはわからない。何かそういうことをやらかしそうな気配、というものが感じられるのだ。ハイリスクのにおい、というか。


 日本では、この人にそれがある。


  佐藤浩市


 彼らを「二日酔い暴発タイプ」と呼びたい。繰り返すが、暴発するかどうかはわからない。その、「するかどうか」という雰囲気がポイントなのだ。


「二日酔いで起きれば、誰でもたいがい不機嫌なのでは?」というご意見もあろう。確かに、そうだ。
 しかし、寝起きにあんまり不機嫌でいてもらっては困る、という人もいる。例えば、この人。


  白木みのる


 というか、この人の場合、寝起きのシーンをまず求められないようにも思う。


 せいぜい、目を覚まして、全員の巾着が盗まれていることに最初に気がつく、とか、そういうシーンしかありえないだろう。
 目を覚ましたらひどい二日酔いで、隣に裸の娼婦が寝ていた、なんていうシーンは、なぜだか、困る。そんなの、みのるっぽくない。ブルース・ウィリスとは対照的である。


 まあ、白木みのるが目を覚ましたらひどい二日酔いで、隣に裸のブルース・ウィリスが寝ていた、というのはもっと困るけれども。


 他に、アメリカンな善人なので、不機嫌に起きてはいけないタイプもいる。「アメリカン善人タイプ」だ。


  ロビン・ウィリアムズ
  スティーブ・マーチン
  マイケル・J・フォックス


 この人達については、特に書きたいことがない。アメリカンな善人タイプというのは、ぬるくて、あまり書く対象として面白くないのだ。


 せめて、白木みのるくらい、遠い地点まで飛ばなければ。
 やっぱ、グレイトだぜ、みのるは。