夕闇に消えた後で

 今日、ウケた新聞記事。


・asahi.com「唐十郎さん最終講義、アングラで締めた 横浜国大退職へ」


「そのまま手を振って拍手に応えながら、高い窓から夕闇の中へ消えていった」。かっちブーである。
 最後をこの文で放り投げた記者も、余韻をうまく残していて、センスがある。


 が、私はどうも余韻に浸りきったまま終われないタチのようで、余計なことを考えてしまうのである。


 夕闇の中へ消えていった後、唐さんはどうしたのか。
「はあ」とか「ふう」とか「やれやれ」と言いながら、タキシードを脱ぎ、パンツ一丁になってからジーンズか何かを履いたのであろうか。黒い靴下を脱ぎ、人間の奥底に潜む得体の知れない衝動により、なぜかその靴下の臭いをくんくんと嗅いだのであろうか。


 芝居を見ながら楽屋の様子を想像するようなもので、ヤボチンスキーなのはわかっている。
 しかし、一方で私は、リアリズムのだらしなさ、間抜けな感じ、蛇足の足っぷりというものも、愛しているのである。


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