検便の思い出

 汚い話になって恐縮だが、便、特に大のほうは都合のよいタイミングで出なくて困ることがある。人にもよるだろうが、出てほしいときに出ないで、出ないでほしいときに出たがって、しばしば往生する。まあ、向こうには向こうの主張があるのだろう。

 この間、突然、ふいと思い出したのだが、小学校時代に検便が定期的にあった。小学生といえば、ウンコチッコに異常にコーフンする時代であるからして、検便はちょっとしたイベントだった。

 ある同級生、仮にS君としておこう。S君は検便のその日の朝、大が出なかった。学校で「出ませんでした」と先生に報告すると、妙に囃し立てられるはずだから(今からするとなぜそんなことで盛り上がるのか、よくわからない)、困ったらしい。

 汚い話の重ね塗りでこれまた恐縮だが、おれのガキの時分、生まれ育った地方の町には野良犬が結構いた。糞もそこらへんにゴロゴロしていて、うっかり歩いていると、ぐにゅっと踏んでしまったものである。

 S君は登校途中、そうした野良犬の糞に目をつけた。棒か何かで糞の一部をすくいとり、検便の容器に収めて、やれよかったわいと学校で先生に提出した。

 二、三日して、校内放送がかかった。

「○年○組のS君、○年○組のS君、すぐに保健室に来てください!」

 嫌な予感を胸にS君が保健室に行くと、保険の先生が大慌てで告げた。

「S君、すぐ入院しなさい! あなた、ジステンパーよ! 」

 以上である。汚い話で誠に申し訳なかった。