わたしはポール・マッカートニーが結構、好きで、聞いていると、確かに天才メロディ・メーカーだなあ、と思う。
一方で、歌詞があまりにシンプルなので、笑ってしまうことがある。
例えば、ビートルズ時代に作った曲、「ハロー・グッドバイ」。
「君はさよならと言って、僕はこんにちはと言う」とか、君はイエスで僕はノーだの、君は止まれで僕は行くだの、僕はハイで君はローだの、まあ、そんなことしか歌っていない。
そうやって、男女のすれ違いを表現しているのだが、このシンプルに徹する態度は大したものだと思う。なかなかできませんよ、自分に自信がないと。
途中、コーラスで♪ドレミファソラシド〜とやるところも、幼稚さを逆手に取ったようなセンスで凄いなあ、と思う。
「ハロー・グッドバイ」と同じようなタイトルでも、ビートルズで一緒だったジョン・レノンの「グッド・モーニング、グッド・モーニング」はだいぶ違う。
冒頭、“Nothing to do to save his life call his wife in. Nothing to say but what a day how's your boy been.”なんて、わたし程度の英語能力では何を言ってんだか、よくわからない。
ポール・マッカートニーの“You say yes, I say no.”のシンプルさとは対照的だ(まあ、ジョン・レノンはとりわけこの頃、ワケわかんないんだが)。
もちろん、歌詞というのはムツカしい言葉遣いをしたから偉い、というものではない。
むしろ、シンプルな表現でグッとこさせることができるんなら、そっちのほうが凄いんじゃないか、と思う。サトウ・ハチロー先生の「小さい秋」を思い出していただきたい。
ポール・マッカートニーには、ウイングス時代に「ジェット」という有名曲がある。
ずっと、てっきりジェット機のことを歌ってるのかと思い込んでいた(悲しいかな、わたしの英語能力では、“Jet!”というところしかわからないのである)。
冒頭の歌詞は、“Jet! I can almost remember their funny faces.”。
「ジェット機! ああ、あの奇妙な表面を思い出すよ」
と、ジェット機が好きで好きでたまらない、ジェット機フェチの歌なのかと思ったら、ジェットさんという女性のことを歌ってるんだそうだ。ちぇっ、なんだ、つまらねえ。
関係ないですね。
ポール・マッカートニーに、シンプルな歌詞でカッコいい曲はいろいろあるが、特にわたしが好きなのは「バースデイ」。
誕生日だ、パーティだパーティだ、ダンスしよう、とそんなようなことしか歌っていないバカみたいな内容なのだが、イカす。ロックはバカで全然オッケーだ。