傷だらけの年明け

 年が明けてから傷ばかりしている。

 新年の2日だったか3日だったか、寝転がっていて起き上がろうとした拍子に、箪笥の取っ手にあごをぶつけた。どうしてそんなことになったんだか、自分でもわからない。今も口の下あたりにひげを剃り損なったみたいな傷が残っている。

 お次は手のひび割れで、外出先でコートの指に手をつっこんでいて、携帯電話を取り出したら血まみれなので驚いた。見てみると、小指の先が割れて血が吹き出ていた。白いボディの携帯電話なので、血が余計に目立つ。近くでたまたま殺人事件があったら、真っ先に重要参考人として引っ張られそうである。携帯電話を慌てて隠し、小指をなめた。いい大人が指をしゃぶりながら立っているというのは、あんまりみっともいい姿ではない。

 元々が乾燥肌のうえに年をとってきたので、冬になると、小指に限らず手のあちこちがひび割れして出血する。スリと金庫破りには向かない体質である。

 昨日は、はさみを使っていて薬指の先を切った。痛みはほとんどないのだが、意外な深手で、動脈でも切ったのだろうか、血がどくどく出た。いくらぬぐっても噴出し、絆創膏も貼れないくらいである。「指先からの出血多量で死亡、なんてのも間抜けだなあ」などと考えつつ、指の根元を輪ゴムできつく縛って、どうにか絆創膏を巻いた。

 新年早々、斬られ与三といった具合である。わたしが偉いのは、与三郎と違って、人の手を借りずに自分で斬っているところだ。別に偉くはないか。自傷癖はないのだが。

 まあ、例によっての注意散漫のせいであって、この調子では年末までに指の二、三本は切り落としているかもしれない。いちかばちかキャベツの千切りにでも挑戦してみようかな。