紅白

 今頃書くのもあれだが、大晦日は紅白を見るともなしに見ていた。

 毎年書いているけれども、今年もこれという出し物はあまりなかった。クリシェというのか、先人たちの遺産を食いつぶしているような演歌か(食いつぶしているというより食い詰めているというべきか)、さもなければ中学校の合唱コンクールみたいな歌が多く、退屈したり気恥ずかしくなったりという具合であった。

 演歌については、あの音列とアレンジのパターンと歌詞の方向性でできることはやり尽くされてしまって、ほとんど廃鉱状態なんではないかと思う。やり尽くされたならやり尽くされたで民謡のように同じフィールドでもゲームは日々新しいという手もあるのだろうが、演歌には形だけでも「新曲」を出さねばならぬという要請があるから、なかなかそうもいかない。何より痛いのは、(紅白で見た範囲に過ぎないが)勢いを感じさせる歌手がいないということで、かつての都はるみ細川たかしのような「なんかわからんけどすげー」という人が出てこないと、これから難しいんではないかと思う。

 合唱コンクールみたいな歌については、まあ、たいがいはわたしの好みの問題なんだけれども、立て続けにそんな歌ばかりが出てくると、嫌気と寒気がしてくる。NHKだから仕方がないのか。しかし、夢や希望や自分を信じてばかりでなく、駄目や失望や毒あってこその共感・同感・生きている味わいだと思うのだが。その点、歌詞の内容と顔のみっともなさも相まって、スーザン・ボイルさんはよかった。

 まあ、悪口ばかり書いたけれども、視聴率なんて追いかけなくていいから、紅白は続けてほしい。年末の悪口の言い収めとして、恰好の番組である。あと、外国人に「タテマエ」「ウソサムサ」という日本語のニュアンスを学んでいただくうえでも、良い教材だと思う。

 毒を吹いての年初めとなった。今年もよろしくお願いします。