コマったギャグ

 今年の流行語大賞エドはるみの「グ〜」が選ばれたそうだ。


 まあ、このところの流行語大賞に共通することだが、「グ〜」って流行ったのだろうか。エドはるみが売れたのは確かだろうが。


 幸か不幸か、実生活で「グ〜」をやる人に出会ったことがない。いや、幸か不幸か、ではなく、幸なのだろう。


 目の前で「グ〜」をやられるシーンを想像してみると、シンドそうである。


 ガキは別によい。あやつらは恒常的なヨッパライだから、勝手にさせておけばよい。


 問題は、いい大人に「グ〜」をされたときである。


 例えば、仕事で非常に相手の気に入る企画を提案したとする。
 相手は、30歳を過ぎた会社員だ。これといって奇に走ったところのない、常識的な人に見える。


 企画の説明をした。見積りもいい範囲に収まっている。流れは上々だ。


 それが、こちらが話し終えた途端に、相手が頬をすぼめて、親指突き出し、「グ〜」。


 何か、非常にコマった時間が流れるのではないか。そのとき、時間はスローダウンするに違いない。


 こちらも頬をすぼめて、「グ〜」と返すべきなのだろう。「グ〜、グ〜」と二回繰り返せば完璧である。
 何しろ、企画が通るか通らないかがかかっているのだ。いや、何より、時間のスローダウンを食い止めるには、それしかない。世界は己の双肩にかかっている。


 しかし、わたしには自信がない。


 己のチンケな自意識に囚われているのだろうか。一方で、人間、落ちてはならない場所がある、とも思うのだ。