- 作者: 野坂昭如,滝田ゆう
- 出版社/メーカー: 宙出版
- 発売日: 2007/01
- メディア: 文庫
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またしても滝田ゆう。
この本は傑作、あるいは名作だと思う。
野坂昭如の短編小説を滝田ゆうが漫画にしたもので、有名な「火垂るの墓」や「エロ事師たち」などが収められている。
私は原作を読んだことがないので比較はできないけれども、共作とはいっても、作品世界は完全に滝田ゆうのもののように感じる。
ただ、他の滝田作品が、絵を描き込むことに入れ込むあまりか、ストーリーがぼうとしているのに対し(そのぼうとしたところが滝田作品の魅力でもあるのだが)、野坂昭如原作のこちらは、どれもストーリーのエッジがきゅっきゅっと効いている。
描かれている時代は、戦中から昭和三十年代くらいまで。主人公は、たいてい、娼婦か、貧乏な男達である。
娼婦達はいずれも心やさしく、来た道が悲しく、末路が悲しい。
男達はいずれもバカで、可笑しく、そして悲しい。
これは、滝田ゆう単独の作品にも共通していえることだと思う。滝田ゆうと野坂昭如は、心底にかなり共通するものがあるんではないか。
それにしても、この、湿った段ボールのような貧しさの、豊かな表現はどうだろう。
映画「三丁目の夕日」のような安易なノスタルジーではなく(ああいうのは昭和のディズニー化だと思う。好きになれない)、触れれば体温の感じられる過去である。
哀切、という言葉を実感しました。
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