和菓子の家

 昨日の文章の最後に、お菓子の家、と書いた。ヘンゼルとグレーテルの話に出てくる例のやつだ。
 ふと思ったのだが、和菓子の家というのがあったら、どんなふうなのだろう。


 例によって行き当たりばったりで書き始めている。行って、当たって、ばったりとは、わたしの人生そのままだが、それはまあよい。


 壁は何でできているのだろう。ヨーカンだろうか。つつくとぷるぷる震える家というのも珍しい。


 屋根はモナカの皮。
 窓ガラスの代わりには、トコロテンに白蜜がかかっている。磨りガラスならくず餅という手もある。


 座布団にはどら焼きがいいだろう。円座に似ているし。
 ちゃぶ台などの調度品には、きんつばあたりか。使い良さという点では落雁のような干菓子のほうがよいかもしれない。


 問題は餡をどうするかで、一応、どら焼き、きんつばに入っているが、和菓子の家というからには、もう少しフィーチャーしてやりたい。
 しかし、床や壁にべっちゃり塗ってあるというのはどうも具合が悪い。泥田の中で暮らすようなものである。


 まあ、モナカの皮の屋根にでも塗っておくか。もちろん、屋根の上にである。下に塗ったら、餡がぼたっ、ぼたっと落ちてきて、たまったものではない。


 布団には、餅系統の和菓子がいいだろう。
 ただし、きなこ餅やあんころ餅の類の布団は、粉っぽかったり、へちゃついたりして、とても寝ていられないから、避けたほうがよい。


 ああ、床を忘れていた。落雁はこっちのほうにまわそう。


 緑茶なしでは暮らしていけなさそうな家である。
 甘い物があまり好きでないこともあり、書いていて、胸のあたりが気持ち悪くなってきた。

                  • -


「今日の嘘八百」


嘘五百十一 お菓子の家を建てた魔法使いは、森中のアリにたかられて散々な目にあったという。