芸へのリスペクト

 この「笑うふたり 語る名人、聞く達人」は、高田文夫が敬愛する喜劇役者やコメディアン、落語家と対談する、という本だ。


 どの対談も面白い。軽い感じで話をしながらも、それぞれの人の芸の内側がかいま見える。
 高田文夫が聞き上手で、現場に身を置いており、何よりそれぞれの人の芸をリスペクトしているからだろう。


 先日、テレビで「〜追悼・植木等さん〜スーダラ・無責任男…みんなあなたが大好きでした…。」という生番組をやっていた。


 残されたテレビのビデオや映画のシーンを見ながら、ゲストが植木等の思い出を語る、という構成だ。


 司会の中山秀征と恵俊彰に、植木等の芸に対するリスペクトがなく、見ていて途中でヤんなった。
 大げさに感心してみせて、滞りなく番組を終わらせられればそれでヨシ、とする姿勢がミエミエで、テレビの悪いところばかりが出ていたと思う。


 見ていた範囲では、ゲストの中で、芸の内側の話をしたのは加藤茶くらいだった。


 司会のふたりとも一応は芸人の出なんだし、何より植木等は戦後最大級のエンターテイナーだったんだから、もっと芸や笑いにまつわる話を引き出せなかったのだろうか。
 例えば、あのガニ股歩きの妙なカッコよさをつつくだけでも、いろいろ面白い話が出てきたはずだ。


 芸談っていうのは、面白いものなのだが。
 司会進行役じゃなくとも、横に高田文夫が立っていれば、だいぶ違う内容になったろうに。

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「今日の嘘八百」


嘘三百九十七 今、イタコに植木等を呼び出してもらうプロジェクトを進めている。