110番

「ぼけ110番」というのがあるんだそうで、たぶん、痴呆症の老人を持つ家族が電話するものなのだろう。
 40年生きてきた経験に照らし合わせると、そういうことになるのであるが――。


相談者「もしもし」
110番「はい。どうされました」
相談者「うちのおじいちゃんが」
110番「亡くなりましたか」
相談者「いや、まだ生きてます。勝手に殺さないでください。そうじゃなくて、徘徊するんです」
110番「あれはねえ、むつかしいんですが……。まあ、時間のあるご老人にはちょうどいいのではないですか」
相談者「え? そういうもんですか」
110番「ええ。要は気の持ちようです」
相談者「そう言われると、少し気が楽になる気がします」
110番「俳諧。俳句。いい趣味です」
相談者「……」
110番「いや、今のところはツッコんでもらわないと困るのですが。ボケの立場も考えてください」
相談者「あんたがボケか」
110番「で、何の話でしたっけ」
相談者「……おじいちゃんが勝手に徘徊するんです」
110番「まあ、許可をもらってから徘徊する人はめったにいません」
相談者「今のはツッコミじゃないですか」
110番「うっ」
相談者「ぼけ110番がそんなことでいいんですか」
110番「ううっ」
相談者「何なら、出るとこ、出ましょうか」
110番「うううっ」
相談者「真面目にボケてください」
110番「はい」


 何だかわからなくなってしまった。


 もっとシンプルなのだと、「ペット110番」というのがある。


相談者「もしもし」
110番「ニャー」


 これだけである。


 だんだん、手口がバレてきたろうから、少し方式を変えてみる。


110番「ハイ! おくすり110番です!」
相談者「あ、あの……」
110番「どうされました?」
相談者「ふ、ふるえがガタガタ、止まらないんです」
110番「それは困りましたねえ。いつからですか」
相談者「き、昨日寝てたら、ひ、ひどく、な、なって」
110番「ははあ。使っていらっしゃるお薬は?」
相談者「へ、ヘロインとアンフェタミン、そ、それから、ブロンを少々」
110番「Hにシャブね。三時間後に○○橋に来い。近鉄バファローズのスタジャンを着た男が行くから。しめて10万だ。ブロンはサービスしといたる」
相談者「あ、ありがとうございます」


オペレーター「ハイ! ○○製菓お客様相談室です!」
相談者「昨日、『あんチョコ』を買ったんですが、あんたんとこの製品ですよね?」
オペレーター「はい、当社の製品ですが、どうかいたしましたか」
相談者「それを買ったということは、僕はあんたんとこのお客様ですよね」
オペレーター「え。はあ(しつこい苦情っぽい……)」
相談者「はっきりしてくれ。僕はお客様か?」
オペレーター「は、はい。確かに当社のお客様でございます」
相談者「よかった。そこで相談なんですが」
オペレーター「はい」
相談者「うちのおじいちゃんが徘徊するんです」


 えー、理屈は合ってるはずでございます。

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「今日の嘘八百」


嘘三百五十九 「徹底討論! 放送禁止用語」という番組をNHKが企画しているという。


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