波のカーブを見る

 なるほど、あらためて見直すと、この絵の波にはたくさんの渦巻くカーブがある。


 目立つカーブをなぞってみよう。
 模写したものを使って申し訳ないが、構図自体はそう違っていないはずだ。ディテールはヘタクソだけれども。


 元の絵はこれ。



 まず、こういうカーブがある。



 さらに、こんなふうにも連なる。



 おっと、上からも。



 ボディブローもあるわけよ。



 うねる、うねる。



 渦とは関係ないが、富士の相似形もある。



 こういう、線の仕掛けに、どれだけの人が気づくのかはわからない。


 たいていはまず波の迫力、筆さばきを「すんげえなあ」と感じ、次に波に巻き込まれそうな船頭達の身の上を心配し(暗い楽しみにし?)、超然とした富士山に神秘的な感覚を覚えるのではないか。
 線の仕掛けに気がつくとしても、だいぶ絵に慣れてからだろう。


 しかし、別に頭で気がつかないでも、渦状のカーブは心に働きかけるだろうから、それでいいのだと思う。


 今やったカーブをなぞる類の作業は、あくまで頭の遊びかお勉強であって、絵にドーンとやられる体験にはかなわない。