裏に生きる

 いったいに表日本の人間は、裏日本の人間の抱えるコンプレックスに対して無頓着だ。


 例えば、かのベストセラーにして、最近、映画がリメイクされた作品にしても、原作者が日本海側出身者なら、


「裏日本沈没


 となったかもしれないのである。表日本まで巻き添えにするのは、裏日本としては何だか申し訳ない気がするからだ。
 裏日本の人間は遠慮深く、同時に表日本に対して懸隔の念を抱いているのである。


 幸か不幸か、裏日本が沈没しても、日本の工業生産量はさして変わらない。
 政府機関だって残るし、新幹線だって、東名高速だって、コンビナートだって残る。
 裏日本に移動する補助金地方交付税がなくなる分、長期的には経済発展に資する可能性すらある。


 コシヒカリやアキタコマチが食えなくなるのは残念だろうが、ササニシキは残る。
 原子力発電所はかなりが失われるが、考えようによっては、これも裏日本が背負わされた宿命である。


 おそらく、日本という国は、打撃はあるにしても、きちんと存続するだろう。
 これが逆で、「表日本沈没」という事態になったら、裏日本はまずやっていけない。