新しい格闘技

 たまに新しいスポーツのルールを考えてみることがあって、この日記にも何度か書いた。


 新しい格闘技を考えたこともある。
 基本的に人生を後ろにどんどん投げ捨てながら生きているので、あまり覚えていないのだが、「踏術」というのは覚えている。


「踏む」という一点に集中して技を磨くもので、選手はお互いの足を狙うのだ。


 左足を狙ってヤッと右足を出すと、相手がすっと左足を引き、今自分が出した足を相手が半回転しながら右足で狙ってくるところを、自分は膝を曲げて足を素早く後ろに戻しながらジャンプして左足で相手の出してきた右足を踏もうと思ったら……という調子で、文章にすると何が何だかわからないが、華麗な舞を見るような駆け引きを楽しめるはずだ。


 もっとも、相手の足が自分の足にベストヒットUSAとなったら、これは痛い。踏まれた足を手で抱えながらケンケンしてしまうだろう。
 アメリカ人なら「アウチッ! ガッデム!」と叫びながら顔を歪めてしまうはずで、やはり、武術としては今イチ、カッコ悪いかもしれない。


 踏術を思いついたのは、たいていの格闘技で「踏む」ことを禁じているか、軽視していることに疑問を持ったからだったと思う。


 他に格闘技で避けられている攻撃法には、「噛む」、「つねる」というのもある。


「噛む」というのは非常に効果的な攻撃手段なのだが、これをおおっぴらに認めている格闘スポーツはないと思う(実戦の手としては有効なので、護身術や軍隊での武術にはありそうだ)。


 まあ、お互いに噛み合うというのは、人間としての尊厳を失いそうなので、禁止して正解である。向き合ったとき、お互いに、ガルルルル、とか言い出しそうだ。


 ――なんか、これ、前にも書いた記憶がよみがえってきた。バカが考えることはいつも同じである、という例証だろう。