タイトルは「殺し文句」の間違いではなく、「殺す文句」。
「殺し文句」というのは、男が女に一言告げて、女があふ〜ん、と腰砕けになってしまうような文句のことだ。残念ながら、わたしはひとつも持っていない。
そうではなくて、今日、書きたいのは「殺す文句」である。
現代アートとか現代音楽とかで、「コンセプト」に頼る表現をぶちこわしにする魔法の言葉があるのだ。
それも、たった一音、たった二文字である。
「で?」
というのがそれだ。
この一言を聞いただけで、気弱なアート野郎なら泣いて実家に帰るだろう。
現代アート殺すにゃ刃物はいらぬ。「で?」の一言あればいい。
もっとも、誰が発するかによって、効果はだいぶ変わる。
例えば、立川談志が「で?」と発したら、たいていの若手芸人がチビるだろう。しかし、わたしが「で?」と発しても、大道具の倉庫に連れ込まれてボコボコにされるのがオチだ。
下手すると、発した側の底の浅さがバレてしまうので、発するときには、それ相応の覚悟が必要だ。