原因において自由な行為

 広辞苑を引いていて、「原因」の項にある、こんな言葉が目に止まった。


「原因において自由な行為」。


 何か、楽天的なにおいがする。
 しかし、実際には、シビアな話のようだ。転載しよう。


―-に-おいて-じゆうな-こうい【原因において自由な行為】[法]自らを責任能力のない状態におとしいれて犯罪結果を発生させること。泥酔状態を利用して他人を傷害する類。


 冬、混んだ電車に乗ると、湿気でいきなり眼鏡が曇るときがある。いきなり目の前が霧の摩周湖と化すので、驚く。


 そうなることを見越して乗り、「や。ややややや。これは何も見えませぬぞ!?」とノタノタしながら、手近な女性に抱きついたりすれば、おそらく、「原因において自由な行為」ということになるのだろう。
 ただし、ロングヘアの女性だと思って抱きついてみたら、実はかまやつひろしだった、ということもありえるから、十分な注意が必要である。


 しかし、広辞苑の例にあるような、「泥酔状態を利用して他人を傷害する」なんて、うまくいくのだろうか。


 まあ、うまくいく(変な言い方だが)人もいるのだろうな。泥酔すると必ず暴力を振るうと、自分で知っている場合なんかは。


 あるいは、泥酔状態にわざと陥り、相手にゲロをぶちまけるという手もある。
 ただし、気がついたら、道ばたでひとりゲロまみれになって寝ていた、なんてこともありえるから、これまた注意が必要である。


 私は、酔っぱらうと、たいてい、いい心持ちになるので、どうも、「原因において自由な行為」作戦には不向きなようである。
 普段、殺意を抱いているような相手にでも、「んー、ま、いっか」となるので、犯罪には向かないらしい。残念である。


 都々逸に、「この酒を止めちゃ嫌だよ、酔わせておくれさ。まさか、しらふじゃ言われない」なんていうのがある。
 まあ、ある意味、「原因において自由な行為」かもしれない。


 今日は、色っぽくシメてみました。


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