2017-01-01から1年間の記事一覧

桜と梅

東京では花見の季節を終えて早ひと月以上になる。今となってみれば、季節も落ち着いて、あの狂乱のアラエッサッサー状態はなんだったのかと思う(おれもあの時期にはいささか心浮かれるのだが)。 おれは桜も好きだが、年をとって、梅もいいなあ、と感じるよ…

米朝とあの世

桂米朝の落語が好きで、よく聞く。 米朝は何年か前に亡くなり、そのとき九十くらいだったから、おれはほとんど同時代体験をしていない。何かの落語の会で他の落語家と座談する姿を見かけたくらいである。噺は、もっぱらCDからiPodに落として聞いている。 だ…

ジョナ・ロムーの葬儀

昨晩は早く寝ようと思ったのだが、ふとしたきっかけでジョナ・ロムーの動画やら何やらを見出したら止まらなくなってしまった。 ジョナ・ロムーはニュージーランドのラグビー選手である。90年代のオールブラックス(ラグビーのニュージーランド代表)で大活躍…

納豆世界

朝、ネバネバ糸を引く納豆飯をワシワシ食いながら、ふと思った。 「納豆菌が突然変異で大増殖を始めたら、世界はどうなるであろうか?」 頭の奥にはJ.G.バラードのSF小説「結晶世界」があった。 「結晶世界」はあらゆるものが文字どおり結晶化していく世界の…

夢のアナキズム

先週に続いてアナキズムの話。 アナキズムの理想とする世界について歌った有名な曲がある。ジョン・レノンの「イマジン」だ。 Imagine there's no countriesIt isn't hard to doNothing to kill or die forAnd no religion, tooImagine all the peopleLiving…

アナキズムは優しく、美しい

アナキズム入門 (ちくま新書1245)作者: 森元斎出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2017/03/06メディア: 新書この商品を含むブログ (4件) を見る 森元斎の「アナキズム入門」を読んだ。5人のアナキスト、プルードン、バクーニン、クロポトキン、ルクリュ、マフ…

水滸伝の明るさ、日本の物語の湿り気

先週に続いて水滸伝の話。 おれが水滸伝を好きなのは、その明るさ、楽天性のゆえもある。 もちろん、水滸伝は長い、長い物語だから、中には暗い話や陰惨な話もある。主人公達(林冲、宋江、武松……)が人に陥れられたり、裏切られたりもする。しかし、基調は…

松枝茂夫編訳版・水滸伝

松枝茂夫編訳の「岩波少年文庫 水滸伝」を読んだ。 読み進めるうちに、「ああ、子どもの頃に読んだ水滸伝はこれだったのだな」と気がついた。小学生だったか、中学生だったか、市の図書館で借りて、とても面白く、夢中になって読んだことを思い出した。 おれ…

らくだ

落語が好きで、よく聴く。あまり嫌いな噺(ネタ)はないのだが、例外のひとつが「らくだ」である。嫌いというより、苦手というほうが近いかもしれない。 「らくだ」はいろいろな落語家がやっている。大まかなストーリーはこうだ。「らくだ」と呼ばれる長屋の…

鎖国と教育

タイトルに「鎖国と教育」と書いたからといって、もちろん、ターヘル・アナトミアだの緒方洪庵だのについて書こうというわけではない。おれにはそんな実力は一切ない。 文部科学省が小中学校の学習指導要領の改訂を進めていて、一時、「鎖国」という言い方を…

鹿児島弁

残念ながら鹿児島に行ったことがなく、今の鹿児島弁がどういうものか知らない。 その一方で、幕末から明治維新を扱った時代劇や時代小説はたくさんあるから、おれの中での鹿児島の言葉はドラマや小説で西郷さんが使うようなもの、薩摩弁というか、いっそ西郷…

靴下の墓場

洗濯物を干しているとき、よく靴下の片方がなくなっていることに気づく。洗濯機のまわりや、物干しまでの動線を探してまわるのだが見つからない。 この「靴下がなぜか片方だけなくなる現象」は国際的な問題であるらしく、イギリスでの調査によると、イギリス…

杉野兵曹長の銅像

おれは古い落語の録音をよく聞く。戦後の志ん生・文楽あたりからで、幸い戦後は落語がラジオの重要なプログラムだったから録音がいろいろと残っており、CDがたくさん出ている。 戦後しばらくの落語で、女が横倒れにくずおれる姿を、まれに「杉野兵曹長の銅像…

東京遷都

相変わらずの思いつきを書く。毎度ながら、ここに書き散らしたことに一切責任をとるつもりはない。 昨日、自転車で皇居のわきを走りながら、「明治維新の際、なぜ都を京から東京へ移したんだろうか?」と考えた。大政奉還の後、京都をそのまま都にする選択肢…

インターネットの知情意

時折、インターネットについて「集合知」とか「知の共有」がどうのという議論に出くわすことがある。 個々の議論をどうこういうつもりも実力もないのだが、どうして「知」というテーマばかりが出てくるのか、ちょっと不思議ではある。 人間の精神活動を「知…

翻案 冥途の飛脚

昨日、誘われて、国立劇場の文楽公演を見てきた。ここ数年、文楽にはご無沙汰していた。 二部の「曽根崎心中」、三部の「冥途の飛脚」を見た。どちらも近松門左衛門の心中物である(「冥途の飛脚」は後段で心中未遂に終わるそうだが、おれは未見)。五時間心…

可朝の米朝評

少し前に柳家小さんと桂米朝と立川談志のCDボックスを買って、今は順繰りに聴いている。どんなに好きな落語家でも立て続けに聴くと飽きてくるから、このローテーション方式はお勧めである。 ついでに、雑誌ユリイカの米朝特集号も買った。2015年6月号だから…

饒舌-トーカティブ-

遠藤周作の小説「沈黙」をマーティン・スコセッシ監督が映画化して、ちょっとした話題になっているようだ。 まだ見ていないが、スコセッシ監督の映画はどれも面白いから、期待できる。 おれが遠藤周作の「沈黙」を読んだのは数十年も前だが、おおまかなスト…

メリー・クリスマス、ミスター・ローレンス

大島渚監督の「戦場のメリー・クリスマス(Merry Christmas, Mr. Lawrence)」を見た。 前に見たのは大学生か、社会人になりたての頃だと思うから、おおよそ三十年ぶりである。そのときは、坂本龍一のテーマ曲は印象的だったが、ビートたけしの乱暴さと坂本…

黄色い洟

今日はいささか汚い話なので、その手の話題が苦手な方にはご容赦いただきたい。 何かを人にたとえて考えてみることがあって、退屈しのぎになる。蝿でも電柱でもカーテンレールに引っかけたハンガーでも、「この人はどういう心持ちなのであろうか」と想像する…