天国の年齢

 夢の中で自分は何歳なのか。

 おれは今、五十三歳だが、夢の中で自分の年齢を意識することはない。

 生まれ育った田舎を自転車で走り回ったり、いささか恥ずかしいが、明日テストなのになーんもやってない、ヤバいわ、と焦る夢を夢をよく見る。どうやらそのときは高校生であるらしい。

 大学生の頃の夢はあまり見ず、社会人になってからのものはほとんどない。圧倒的に現在(かどうか曖昧だが)か、高校生時分の夢が多い。高校生の頃というのは物事の感じ方が新鮮で、それが記憶に残っているのだろうか。

 年齢といえば、あの世に行ったときの年齢というのも気になる。

 おれの祖母は十何年か前に九十過ぎで亡くなった。太平洋戦争で夫(つまり、おれの祖父)を亡くし、それからは毎日仏壇に経をあげる生活をしていた。

 祖父の亡くなった年齢は知らないが、おそらく三十代である。

 天国での年齢はいくつなのだろうか。もし亡くなったときの年齢だとすると、天国で三十代の祖父は九十過ぎの祖母を迎えることになる。「わたしです! ○○です!」と九十過ぎの祖母にすがりつかれるのだ。三十代の祖父はずいぶん困惑すると思うのだが。