例によって唐突な話題でご容赦いただきたいが、おいしい名前というのがあるように思う。
口にしたとき、口の中に快感が広がる名前だ。精神的な快感ではなく、あくまで肉体的な快感である。
例えば、映画監督の、
なんてのがそうだ。
試しに窓を開け、外に向かって大声で、「アッテンボロー!」と叫んでみていただきたい。
特に、「ボロー!」のあたりで、肉を食いちぎったようなおいしさを覚えるはずだ。
しかし、「ボロー」だけでいいかというと、そうではない。「ボロー!」とだけ叫んでも今イチなのだ。
「アッテン」と来て、「ボロー」と来る。この取り合わせが絶妙だ。アッテンボロー! アッテンボロー! 最高だぜ。
日本にも似たタイプの名前の人がいる。CGアーティストの、
だ。
「ダイザブロー」より、「ダイザブロウ」と末尾の口の形を変化させたほうが、いっそうおいしいかもしれない。
ハラダ・ダイザブロウ! ハラダ・ダイザブロウ! ああ、おいしい。
「ロー」または「ロウ」で終わると快感なのか、とも思ったが、よく似た名前の俳優「原田大二郎」には「原田大三郎」ほどの快感はない。「ザブ」が効いているのだろう。
欧米の名前にしても同じで、元テニス選手の「ジョン・マッケンロー」も、まあ、そこそこおいしいが(甘い紅茶風である)、「リチャード・アッテンボロー」のおいしさにはかなわない。リチャード・アッテンボロー! ああ、やっぱり、いい。
別種のおいしさを感じさせる人に、フランスの俳優の、
がいる。
「ジャン=ポール」がおいしい。「ジャン」を、フランス語風に、鼻に抜く発音でやると、絶品だ。
さあ、やってみましょう。ジャン=ポール、ジャン=ポール。
しかし、不思議なもので、おいしい「ジャン=ポール」とおいしい「アッテンボロー」を組み合わせて、
ジャン=ポール・アッテンボロー
という名前を作っても、今ひとつおいしくないのである。
おいしい肉料理とおいしい魚料理を、ひとつの皿にのっけてはダメ、ということだろうか。