街の陰と陽

 先週の日曜日に武蔵小金井に行った。

 待ち合わせまで時間があったので、あたりをぶらついたら、南口に大型のショッピングモールがいくつも立ち並んでいて驚いた。いわゆる駅前再開発というやつである。

 おれは三十年ほど前に半年ほど武蔵小金井で働いたことがある。もはや記憶も曖昧だが、当時の南口にはビルもあんまりなく、普通の商店や民家が並んでいたと思う。随分な様変わりである。

 ショッピングモールは小綺麗で、何の陰りもなかった。しかし何か足りないような、落ち着かないような感じがした。

 おれは、街には陰の要素と陽の要素が必要なんじゃないかと思っている。

 陽は明るい、新しい、華やかなもの。新しいショッピングモールが代表だ。

 陰の代表は縄のれんの下がったような古い居酒屋。あるいは昔ながらの町中華。新しい、きれい、といった要素はまるでないけれども、いると落ち着く。

 陰と陽の両方があって、街はいい感じになるんじゃないかと思う。

 たとえば、幕張やお台場はほとんど陽しかない街で、つまらない。横浜は割とバランスがとれいていて、みなとみらいあたりの陽に対して、馬車道あたりの陰がある。横浜が街として魅力的なは陰と陽が合体しているところにあると思う。

 役所は再開発というと、陽のものを作りたがる。それがよいもの、よい街という固定概念があるのだろうか。それとも、役所自体が本質的に陰なものだから、光を求めて陽をつくりたがるのだろうか。

 ショッピングセンターも時間がたてば古びていく。だんだんと陰のほうに向かっていくのだが、それで味わいが出るかというと、少なくともおれは味わいのあるショッピングセンターというものに出会ったことがない。残るのは物悲しさだけだ。