サイゴウドン

 家にころがっているいいちこのラベルを見たら「下町のナポレオン」と書いてあって、あー、そういえば随分昔からこのキャッチフレーズを使い続けているよなー、と思った。

「下町のナポレオン」というフレーズは、もちろん、ブランデーの等級の「ナポレオン」から来ている。ナポレオンはコニャックやアルマニャックでは高級酒で、かの英雄ナポレオン・ボナパルトに由来している。

 それでふと思ったんだが、芋焼酎にも等級を導入したらどうだろうか。高級芋焼酎を、我が国の誇る英雄にちなんで「サイゴウドン」と名付けるのである(薩摩弁では「セゴドン」という発音が近いらしいが、ここは全国視点でマーケティングする)。「さつま美人 サイゴウドン」「海童 サイゴウドン」「魔王 サイゴウドン」「さつま白波 サイゴウドン」などと、なかなかに雄々しく、豪快ではないか。もちろん、「サイゴウドン」の名称は薩摩芋焼酎にしか許されない。宮崎あたりの芋焼酎が「サイゴウドン」を付けようものなら、チェストーッ! 西南戦争が再び勃発する。

 幕末〜明治期に薩摩からはいろいろな英雄が出ているが、ここはやはり、「日本の国ナ、戦(ゆっさ)がまだまだ足りもはん」と豪快に言い放つサイゴウドンだからいいのであって、イチゾードン、では今ひとつ迫力が足りない。キリノドン、シノハラドン、カワジドンでは小粒である。

 ただ、この名称が高級酒と認知されるようになると、そのうち「下町のサイゴウドン」と名乗る酒も出てくるかもしれず、そうなると、もはやわけがわからないのである。