地上デジタル放送への対応

 地上デジタル放送についての案内が郵便受けに入っていた。発行元は総務省になっているので、たいていの世帯に届いているんじゃないかと思う。

 中にパンフレットがあって、表には「初めて、我が家にテレビが来たときのうれしさ。」「白黒からカラーになったときの驚き。」「あの時のテレビの感動を再び……」などと書いてある。地上デジタル放送への移行をノスタルジーとからめてポジティブに見せようという作戦なのだろう。

 ま、しかし、映像の解像度と音質が向上したからといって、テレビ放送が始まったときやカラー化したときほどの驚きがあるとは思えない。ニュースや天気予報がいつでも見られる、電子番組表をすぐ検索できるといっても、さして便利とも思えない。

 どうもこうした説明の仕方には、うさんくささがつきまとう。うさんくささという言い方がひどすぎるなら、言いくるめる、といってもよい。

 地上デジタル放送は、要するに、テレビをデジタル化することによって、テレビ放送に使う電波の帯域幅を狭め、その分を他の用途(主に通信)に使おうということだろう(この説明はパンフレットにもあった。それ自体は結構なことだ)。本当は今のテレビの画質・音質のままデジタル化すればもっと帯域幅を狭められる。しかし、既存の地上波テレビ局は、多チャンネル化して新規参入業者(特に新しいビジネスモデルを打ち出す企業)が増えるのが怖い。そこで、画質・音質向上と付帯サービスを打ち出して、割り当てられた電波の帯域幅を既存のテレビ局だけでフルに使えるよう動いた。そういうことだと理解している。

 わたし自身は、テレビの画質や音質がよくなることに全然興味が持てない。ニュース・天気予報などの付帯サービスだって、パソコンや携帯電話でインターネットが利用できれば、そっちのほうがはるかに便利だ。今は全くテレビを見ない週もあるし、つけてはみたものの5分ほどでつまらなくなり消してしまう週もある。30分も見る週があれば特別なほうだ。それで全然困らないし、むしろ快適な感じすらする。

 地上デジタル放送に切り替わるのを機に、いっそアンテナを撤去してテレビと縁を切るのも1つの選択肢ではないか。地上デジタル放送への対応は「特にしない」というのもありだと思う。