Aさんの卓説

 仕事で知り合ったAさんと飲みにいった。Aさんはおそらく五十過ぎくらいだろう、会社員である。

 どういう流れだったかは忘れたが、最近の青少年の話になった。

「あいつらね、人の痛みがわかんないんだよ。自分の痛みにばかり敏感でね、同じ痛みを人も感じているってことがわからない。理屈ではわかっても実感できない」
 と、Aさんは言う。そういうところがあるかもしらんなあ、と思った。まあ、人にもよるんだろうし、自分が青少年であった頃にどうであったかは甚だ心許ないが。

 Aさんによれば、青少年による「誰でもよかった」という類の犯罪や、いじめなどは、全て心の痛みの問題に帰着するという。

 どうすればいいですかね、と訊いてみた。家庭内の教育は外部からどうこうしにくいし、学校教育にこれ以上負荷をかければ教師がパンクしかねないし。

 Aさんは言った。
「死刑にしちゃえばいいんだよ。そんなやつらは」

 ――というのは、今、作った話だが、これに似た豪快にして粗雑な意見は結構多いように思う。