エー、落語のまくらで、「『碁将棋に凝ると、親の死に目に会えない』なんてェことを申しますが」なんてェことを申しますが、実にこの、大変なものでございますナ。
……このまま、落語弁で続けてもいいのだが、永遠に本題に入れない気がするので、ここまでにしておく。
わたしは、将棋の駒の動きくらいならわかるが、碁のほうはさっぱりだ。
わかるととても面白いらしいが、きっかけがなくて、やらずにいる。これもひとつの縁ですナ。油断すると脇からスッと出てくるから、落語弁はオソロシイ。
で、新聞の碁の観戦記事を読んでみると、これが見事にわからない。
例えば、何日か前の朝日新聞に「第33期名人戦 挑戦者決定リーグ戦 第25局第4譜」として、こんな記事があった。
夜戦に入って、白74と突き出したとき、陳は黒75と戻って白2子をカカえた。とたんに記者室は「クレージーだ」「陳さん、どうしちゃったのかな」と非難のあらしが巻き起こった。
何か大変な事態が起こったらしい、ということはわかるが、何がどう大変なのか、陳さんが何をカカえたのか、全くわからない。
記者達が陳さんに非難のあらし、というのも、何だか不思議な現場だ。記者達、コーフン状態にあるらしい。
さらに読み進めてみる。
進行を追ってみれば確かにクレージーだ。白78、80と出切られて黒81から83と切り離したものの、白84で黒地が白地に変わったではないか。さらに白90の切りが厳しい。
ますますもって、わからない。
この後、宮沢解説者という方の「相場」についての話があって、
陳は相場なんかにがまんできなかったのだ。黒91、93と押しつけ、97、99の頑張りをまのあたりにして解説者の見方が変わった。
「クレージーだなんてとんでもない。陳さんの構想は私たちのはるか上を行ってました。図は白もひと息つきます。実戦こそ、わけの分からぬ勝負に持ち込み、白に恐怖を与える唯一の道なのですね」
唯一の道。それはもしかして、「希望」、ですか。
97、99は何を頑張るのか。白は何に恐怖を覚えるのか。「わけの分からぬ勝負」は何のわけが分からぬのか、わたしにはわけが分からぬ。
具体的なことは何ひとつわからぬのに、文章のテンションからして、ハクネツの状況が現出していることだけはわかる。
沈思黙考三十分。
“どうやら陳さんという方は、対戦者に理解できない手を打って、「こやつ、何か考えているのか」と、疑心暗鬼に陥らせる作戦に出たらしい”と解釈した。いや、違ってたら、ごめんなさい。
この勝負、その後、どうなったかというと、最後は、陳さんが負けたらしい。今朝の新聞によると（「第33期名人戦 挑戦者決定リーグ戦 第25局第7譜」）、
うまそうに見える黒175（7の十二）が陳無念の敗着である。参考図の黒aが絶対の利きなら、黒1でもよかったはずだ。白は2と備えるくらいのもの。そこで黒3とブツかる。白4から8と実戦と同じように生きれば、白10に続いて黒bのコウが権利となり、すぐに黒cからの出切りが成立する。この図であらゆるヨセを想定して、黒のわずかに厚い半目勝負という。aと1に黒がある実戦は、コウが残らない分だけ白が得したことになる。その差が明暗を決定づけたのだった。陳またも惜敗。
今、頭の中が真っ白になっております。
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「今日の嘘八百」
嘘七百七十二 嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘八百。
