なぜ出版社は書名を疑問形にしたがるのか

 近頃の新書やソフトカバーの本には、「〜か」と疑問形のタイトルをつけた本が多い。


 今朝の新聞の一面下には、こんなタイトルの本の広告が載っていた。


ヤマザキパンはなぜカビないか」


「クマにあったらどうするか」


ヤマザキパンは〜」のほうは食品添加物についての本。


「クマにあったら〜」のほうはこんな内容だそうだ。


単独で40頭のヒグマを仕留めたアイヌ民族最後の老狩人が重い口を開いた。絶体絶命の場面に遭遇しても生き残る術とは。半世紀を超える猟師経験がクマの本当の姿を物語る。


 うーん。その内容で、「クマにあったらどうするか」というタイトルはちょっと強引ではないか。ノウハウ本と勘違いしてしまう(今の日本に、クマに会った場合のノウハウを必要とする人がどれほどいるのか、わからないが)。


 相変わらずテキトーに霊感で書くのだが、この手のタイトルが増えたのは、「さおだけ屋はなぜ潰れないのか?」が売れたからではないか。


 確かに、「〜か」と疑問形にすると、人はつい引っ張られてしまう。質問されたらそれについて考えなければならない、という人間のプレッシャーを利用した、出版社の作戦なのであろう。


 いわば、タイトルの「〜か」という質問をエサにして、読者を釣るわけである。つい手にとって買ってしまった人は、釣られたわけである。


 恥ずかしながら、わたしも「さおだけ屋はなぜ潰れないのか?」を買ってしまった。
 会計学についての本なのだが、さおだけ屋が潰れない理由を読んだらそこで満足してしまい、残念ながら会計学については今もって何もわからない。


 試しに、ネット書店のAmazoneで「のか」と付くタイトルを検索してみた。出るわ、出るわ(副題は全て省略)。


「3年で辞めた若者はどこへ行ったのか」


「価格はなぜ動くのか」


「何のために働くのか」


「コンピュータはなぜ動くのか」


精神科医はなぜ心を病むのか」


サブプライム後に何が起きているのか」


「誰が日本の医療を殺すのか」


「富裕層はなぜ、YUCASEE(ゆかし)に入るのか」


「若者はなぜ3年で辞めるのか?」


「プログラムはなぜ動くのか」


「日本の「安心」はなぜ、消えたのか」


「ネットワークはなぜつながるのか」


「なぜ会社は変われないのか」


iPodは何を変えたのか?」


「時間はどこで生まれるのか」


「なぜ、働くのか」


「なぜ投資のプロはサルに負けるのか?」


「なぜマネジメントが壁に突き当たるのか」


「日本はなぜ敗れるのか」


「あなたの話はなぜ「通じない」のか」


「なぜ貧困はなくならないのか」


「なぜ私だけが苦しむのか」


 まだまだある。総件数5,398件だそうだ。
 こうやって見てみると、世の中というのは、実にさまざまな問題を抱えているのだなあ、と思う。


 本屋でこういうタイトルに釣られて、つい手が伸びそうになったとき、それを防ぐ魔法の言葉がある。


 それは、「愛ゆえに」だ。心の中で、そっとつぶやくといい。


「価格はなぜ動くのか」
「愛ゆえに」


「コンピュータはなぜ動くのか」
「愛ゆえに」


精神科医はなぜ心を病むのか」
「愛ゆえに」


「若者はなぜ3年で辞めるのか」
「愛ゆえに」


「なぜ投資のプロはサルに負けるのか」
「愛ゆえに」


ヤマザキパンはなぜカビないか」
「愛ゆえに」

                  • -


「今日の嘘八百」


嘘七百十五 クマにあったらもちろん、極真カラテで戦うべきである。