とりあえず謝っておく〜2

 Amazonから来たメール。腰が低いというか、大仰というか……。


誠に申し訳ございませんが、大変残念なご報告があります。お客様のご注文内容のうち、以下の商品については入手できないことが判明いたしました。


 古今亭志ん生 (アーティスト), 古今亭志ん生
 (アーティ "名演集(6)"


私どもでは、ごく最近までこの商品を入手可能なものと見込んでおりました。この結果がわかるまでに長い時間がかかったことについても、心よりお詫びいたします。


勝手ながらお客様の注文からこの商品をキャンセルさせていただきました。
お届け先が国内の場合、この商品がキャンセルされたことにより、この商品と同一の注文番号で他にご注文いただいている商品の合計金額(税別)が一定額を下回ると、請求額に配送料が加算される場合がございます。
その場合、当サイトにて配送料の調整を行いますので、お手数ですが、下記のURLからカスタマーサービスにEメールでお問い合わせください。
**********(稲本註:URL)


Amazon.co.jpでは、発送済みの商品についてのみご請求させていただくため、この商品に関するお客様へのご請求は一切ございません。


Amazon.co.jpでは、商品の価格と在庫情報の把握に細心の注意を払っておりますが、仕入先の在庫状況の変化を、Amazon.co.jpサイトにすべて反映できない場合もあります。価格や在庫状況が正確に把握できていなかったため、お客様にご迷惑をおかけしたことを重ねてお詫び申し上げます。


 いやー、詫ーびる、詫びる。


「誠に申し訳ございませんが、大変残念なご報告があります」、「長い時間がかかったことについても、心よりお詫びいたします」、「お客様にご迷惑をおかけしたことを重ねてお詫び申し上げます」。


 かいつまんで説明すると、ネット書店のAmazonに、古今亭志ん生のCDが2、3週間で届けられる、とあって、注文した。
 たぶん、AmazonはCDの発行元から取り寄せるつもりだったが、発行元に在庫がなかったのだろう。


 ないものはどうしようもない。それで、この長ーい謝罪のメールが来た、というわけだ。


 わたしは注文したことすら忘れていたくらいだから、CDが手に入らないのは別にどうでもよい。
 むしろ、このメールの文章のほうが興味深い。


 たぶん、これ、文面からして自動で送るようになっているのだろう。商品名だけが差し変わるのだと思う。


 自動で、おそらくは大勢の人に送るメールに「誠に申し訳ございませんが」、「心よりお詫びいたします」。
「誠に」「心より」を自動で送るっていうのも、何だかなあ、と思うのだ。


 引用した日本文の後には、英文が載っている。


English: When we contacted our supplier we learned that the above item is no longer available. This unavailable item has been cancelled from your order and you have not been charged for it. We apologize for this inconvenience.


 英文はこれだけ。簡にして要を得ている。あ、配送料の件が抜けているか。ま、それを加えたとしても、大した長さにはなるまい。


 でもって、この英文の後に、今度はメールの取り扱いに対する注意書きが日本語で書いてある。


誠に申し訳ございませんが、こちらのEメールは配信専用のアドレスとなっておりますため、お問い合わせ等のメッセージを受け付けることができません。恐れ入りますが、ご不明な点は、下記のURLからカスタマーサービスにEメールでお問い合わせください。


 また謝られた。「恐れ入りますが」って、本当に恐れ入っているのだろうか――というのは、ま、ちょっと意地悪に書いてみただけである。


 こういう、やたらと謝る態度、へりくだる態度というのは何なのだろうか。慇懃無礼というのともちょっと違うし。
 日本には、謝り菌みたいなものがあって、感染してしまうのかもしれない。


 ――ところで、こういうメールに著作権ってあるのだろうか。ほぼ全文転載してしまったが。


 あ、通信の秘密ってのもあるか。


 ハハハ。Amazonさん、文句あるなら、かかってこい。こっちもいつでも謝る用意ができてるぜ。

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「今日の嘘八百」


嘘五百六十三 クレタ人は嘘つきだ、というのは嘘であるらしい――という、嘘。