講談をやってみる

 相変わらず落語をよく聴いているが、近頃はちょこちょこと講談も聴くようになった。


 といっても、今の講釈師はよく知らないので、戦前(よく録音が残っていたものだ)から昭和三十年代くらいのものをCDで聴いている。


 普段、「なんちゃったりして〜」などとフザケた態度で生きていると、講談は最初、とっつきにくい感じがする。しかし、しばらく聴いているうちに心地よくなってくる。


 いろいろ聴いているうちに、ふと、森鴎外の、特に歴史物は案外、講談にハマるんではないか、と思った。
 でもって、自分でやってみよう、と妖しの思念が湧いてきた。


 作品は「阿部一族」に決めた。


 パソコンにピンマイクをつなぎ、音楽ソフトで録音することにした。


 講談といえば、「パパン、パン」と鳴る張扇(はりせん)が大事だ。
 ペンとかリモコンとか、そこらのものでいろいろ机を叩いてみた。結果、電卓で机を叩くと、一番それっぽい音がするとわかった。


 昨日、わたしの部屋の前を通った人は、やたらとパンパン、音がするので不審に思ったかもしれない。


 以下、「講談・阿部一族」を聴いていただこうと思うわけだが、小説「阿部一族」から都合のいい部分だけ抜き読みしているけれども、鴎外先生の書いた文章は一言一句変更していないことを付言しておく。