アメリカにおけるアメリカンフットボールの人気というのは大変なものらしい。
NFLのチームは53名もの登録選手を抱え、試合は週に1回しかない。Wikipediaによると、それでもほとんどのチームの財政が黒字だという。
「観客動員は、1試合の平均収容可能人員の90%以上に相当する動員を記録している」、「チケットはすぐに売り切れるため、テレビ中継の視聴率もきわめて高い」ともある。
今、手元に本が見あたらないのだが、確かデビッド・ハルバースタムが「男たちの大リーグ」に、アメリカンフットボールはテレビ向きで、高い人気を得たのはテレビが普及してからだ、というようなことを書いていた。
なるほど、アメリカンフットボールは、ボールを持つ選手とその周辺だけでなく、パスを受けようと走る選手、おとりになる選手、それをつぶしにいく選手等々、幅広いエリアの動きを見て、楽しめる。
逆に言うと、映像のないラジオの時代には、聞いていても何が起きているのか、よくわからなかったのではないか。
「クォーターバックにボールが渡った、ワイドレシーバーが左に動いて――あ、走った、走った、ジョニーが走った!」
コーフン的なことが起こっているのはわかるが、何がどうなったんだかわからない。
その点、野球はラジオでも状況をつかみやすい。ランナー2塁で外野にヒットが飛んだら何が起きるか、あるいは1アウト1塁でショートがゴロを捕ったら何を狙うか、ある程度野球を知っていれば、想像がつく。
将棋に熟達している人達は電話でも将棋を指せるそうだけれども、それに似たところが野球にはある。
サッカーもアメリカンフットボールに近くて、なかなかラジオではわかりづらいのではないか(まあ、アメフトのラジオ中継よりは、やりようがありそうだが)。
Jリーグの草創期の頃、知人がラジオでサッカーの中継を聞いていたら、いきなりアナウンサーが「蹴った!」と一言叫んで、驚いたという。まあ、アナウンサーも慣れていなかったのかもしれないが。
バスケットボールも難しそうだ。瞬間的な位置関係を伝えづらいということもあるけれども、それ以上に展開が早すぎて、アナウンサーもついていくのが大変だろう。
ヨーロッパや南米のトラックの運ちゃんなんかはラジオでサッカーの中継を聞いていそうだけれども、アナウンサーのペラペラ喋る声を耳にしながら、彼らの頭の中にはどんな光景が浮かぶのだろうか。
もっとも、勝手に状況を想像して(=作って)楽しむ、ということも人間にはでき、テレビで見るのとは違った楽しみがそこにはある、ともいえる。
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「今日の嘘八百」
嘘五百七 ただし、イタリアのトラックの運ちゃんは、サッカーのラジオ中継を聞いたりはしない。ハナから仕事をサボる。