風邪

 また風邪をひいている。


 症状はというと、とりあえず意識ははっきりしている。
 それはそうで、意識がなかったら、こんなところに物を書いたりはしていない。


 まあ、軽症で、日常生活に支障はない。


 夏に風邪をひくのは、たぶん、外を出歩いて汗をかき、冷房のきいたところに入って、冷えるのがひとつ。
 もうひとつは、あまりに暑いと、夜中に目が覚めてクーラーや扇風機のスイッチを入れてしまうからで、これまた汗をかいているから見事に風邪をひく。


 じゃあ、夏以外はどうかというと、春や秋は天候が不順で、急に温かくなったり寒くなったりするから風邪をひき、冬になるとそれはもう寒いから、やたらめったら風邪をひく。


 要するに、年がら年中風邪をひいているわけで、おそらく1年の3分の1は風邪をひいて暮らしているのではないか。


 ああ、病弱なわたし。


 こういうふうに風邪をひいていると書くと、読んだ方から「気をつけてください」という有り難いお言葉をいただくこともあるのだが、一方で何に気をつければいいのか、よくわからない。


 体の抵抗力が落ちているどころか、体のほうでハナから抵抗する気がないのだろう。ガンジーみたいなものだ。違うか。


 しかしまあ、風邪をよくひくことにも、いくらかはいいことがある。
 それは、明日は明日の風邪をひく、と、いさぎよくアキラメてしまうことで、無駄にガンバるということがない。ガンバらないから風邪がひどくなることもない。


 そうやってアキラメ続けているうちに、悟って、涅槃の境地に至るかもしれない。


 おそらく、いまだかつて、風邪をひいて悟りを開いた人はいないだろう。もしそうなら、人類史上初だ。参ったか。


 え、まだ悟ってないだろう? ソウデシタ、ソウデシタ。ヘックション。

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「今日の嘘八百」


嘘五百四 わたしを生物兵器として某国に送り込むと、先ほど、政府の秘密組織から電話がありました。