ミスのポーズ

 ミス・ユニバースに日本の何とかいう女性が選ばれたんだそうで、それ自体は、ふーん、というくらいのニュースだ。


 ただ、くだんの女性が、最後の発表で自分の名前が呼ばれたとき、ちゃんと「Oh、Oh、本当に私が〜?!」というポーズをしていたのは面白かった。


 両頬に手を当てて膝を曲げる(左右どちらかにちょっと振ると、いっそうキマる)例のポーズだ。


 また、まわりのミスの人達がきちんと「おめでとう」、「よかったわね」、「きっとあなただと思っていたわ」と型通りの祝福をしているのも、いい。
 自分からミスになろうという女達だ。内心は「なんでこんなのが」などと思っているだろうに。


 あのポーズ、少なくとも日本では見かけることがない。


 例えば、大相撲夏場所14日目、千代大海を破って優勝と横綱昇進を決めた白鵬が、いくらうれしくとも、あのポーズをキメてはいろいろ問題があろう。
 小学校の読書感想文コンクール1等に選ばれた女の子があのポーズで喜ぶ、というのも、何かマズい気がする。あ、男の子でもマズいか。


 ミス・ユニバースというのは、顔やスタイルだけでなく、立ち居振る舞いも審査されるようだ(よくは知らない)。たぶん、身のこなしのコーチを受けるのだろう。あのポーズもあらかじめ練習しておくのだろうか。


「ハイ、『信じられない!』って顔して。膝はきちんと揃えること。ヒップはもっとキュッ。こういうふうに、キュッ、キュッ。ね、わかるでしょ。キュッ」


 なんてふうにコーチングを受けるのか。
 あそこに立っている全員がひそかにそんな練習をしていたかと思うと、キャビアの親。チョウザメである。


 ま、しかし、物事、見ているだけではわからないことというのもある。自分でやってみて、初めて実感できることもあるのだ。


 膝を揃えて曲げながら左斜め25度に向ける。お尻も、いやらしくない程度にキュッと振る。上体は自然に下がるにまかせ、脇をしっかり締めながら頬に両手を当てて、「Oh、Oh」。


 部屋でひとりでやっていて、ものすごく馬鹿馬鹿しい気分になった。

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嘘四百六十一 天才教育とは孤独な人間を作る教育である。