赤ちゃんと申告漏れ

 昨日、新聞を手に取ると、一面のこんな惹句が目にとまった。


赤ちゃん5億円「贈与税逃れ」


 海外財産の贈与をめぐり、名古屋市の大手教育系出版社会長から贈与を受けた赤ちゃんが約5億円の申告漏れを指摘された。


(2007年6月4日付朝日新聞朝刊より)


 いいなあ。


 いや、実際には、贈与した祖父なり、赤ちゃんの両親なりに話したんだろうが、そこは杓子定規が求められるお役人。あえて、赤ちゃん本人に申告漏れを指摘した、と考えたい。


 アナタねえ、○○年○○月に、祖父から米国債の贈与を受けてるでしょう?
赤ちゃん バブー。
 いや、答は、ハイかイイエでお願いしたいんですよ。これは記録に残るんですからね。
赤ちゃん ブブブブブ。
 あのですねえ、ちょっと真面目に聞いてもらえませんか――アイタタ、髪、引っ張らないで!
赤ちゃん きゃっきゃっきゃ。
 これ、申告漏れというだけでなく、場合によっては国籍を利用した脱税にもなりかねない――あ、ちょっと、書類を舐めないでください! あっ、調書を破いてはいけません! あああっ、帳簿にミルクを吐かないで! ちょ、ちょっとアナタ、いい加減にしなさいっ!!
赤ちゃん ワーッ!(泣)
 フン。泣いてもダメですよ。アタシだって、この仕事、もう二十年、やってるんですから。泣き落としなんてね、他ンところはいざ知らず、この名古屋国税局には通用しないんですよっ!
赤ちゃん ワーッ! ワーッ! ワーッ!(泣)
 弱ったなあ。オレ、独身だし、赤ちゃんの扱い方、よくわからないし……。(意を決して)ばあ!
赤ちゃん (様子を見ている)
 ばあ! ばあ!
赤ちゃん ひゃひゃっ。
 ばあ! ばあ! ばあ!
赤ちゃん ひゃっひゃっひゃ。
 ばあ! ばあ! (とどめとばかり)ばああああああっ!
赤ちゃん ぎゃっ。
 あれ。あ、ちょっと。あれ……。何か痙攣してるよ。ちょっと大丈夫ですか、ちょっと、ちょっと! お気を確かに!


 突発性コント台本執筆症候群に襲われた。ラジオ向きかもしれない。

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「今日の嘘八百」


嘘四百五十 村の人がひさしぶりに訪ねてみると、ものぐさ太郎は即身成仏と化していたという。