物量作戦

 タレントの物量作戦ともいうべき、2本の広告がある。


 ひとつは資生堂のシャンプー「TSUBAKI」。


資生堂 TSUBAKI(音が出るので注意してください)


 もうひとつはNTTドコモの「DoCoMo 2.0」。


DoCoMo 2.0(こっちも音が出ます)


 こういうのを見ると、いかにも代理店仕事だなあ、と思う。


 どうしてかというと、これらに出ているタレント達、全員、ひとりでも広告を担える。
 事務所との調整は結構、大変そうだし、スタッフも多そうだし、いろんなメディアに展開してそうだし、相当なお金が動いているのだろう。代理店が制作会社に丸投げして済むタイプの広告ではない。


 どこが何をやったかは知らないが、たぶん、アホみたいに分厚い企画書と、アホみたいな回数のプレゼンと、アホみたいに長いミーティングがあって、アホみたいにたくさんの携帯電話が鳴り響いたんだろう。


 で、アホみたいにいろいろやった結果、どっちの広告の出来がいいかというと、「TSUBAKI」のほうが断然上だ。


 物量作戦と「日本の女性は、美しい。」というメッセージがうまく絡んでいるし、「花椿」の資生堂の、古き良きイメージも活かしている。コピーライターや撮影スタッフ、メイク、スタイリスト、グラフィックデザイナーにも力のある人を揃えたのだろう。


 何より、全体がうまくコントロールされているから、資生堂か代理店か制作会社かわからないが、プロジェクトの全体を見ている人が優秀なのだと思う。


 もう一方の「DoCoMo 2.0」のほうは、酷い。代理店仕事の悪い部分が出ていると思う(「代理店仕事」という言い回しには本来、あまりいい印象がない)。


 人気タレントを揃えて、「若者向け」(こんな言葉が出たら、もうその時点でズレているが)にポップに仕立てたつもりなのだろう。


 しかし――イメージ調査の結果を見たわけでも何でもなく、あくまでわたしの印象なのだが――これ、見た人が使ってみたいと思うだろうか。


 伝わってくるのは、携帯使ってにぎやかにワイワイやっちょります、というだけで、それなら、別にそこらの居酒屋と変わらない。CMのシナリオも下手だ。すこぶる費用対効果の悪そうな広告である。


 今、サイトを見て知ったのだが、キャラクターの設定、男性陣は高校のサッカー部つながり、女性陣はフライトアテンダントつながり、って、それはいくらなんでも幼稚じゃなかろうか。読んでいるほうが気恥ずかしくなる。


 プロジェクトの全体を見ている人がダメか、あるいは存在しないのだと思う。


 わたしの霊感なのだが、「DoCoMo 2.0」のほうの広告は、いずれ壮大な責任のなすりつけ合いが起きそうだ。


 でもね、こういうのは、煎じ詰めると、結局はお金を出すクライアントの宣伝部にどんだけの力量があるか、という問題なのよね。
 企業文化っていうのは、こういうところに透けて見えるから面白い。

                  • -


「今日の嘘八百」


嘘四百四十二 透視能力が強力すぎて、結局、何も見えない。